2016年7月に観た舞台

国分寺大人倶楽部『ラストダンス』
国分寺大人倶楽部の解散公演。今まで若者たちの青春や恋愛を描いてきた河西裕介が、最終公演で「大人」を描いた。恋愛に一喜一憂したり友人たちとワイワイやってた楽しい若い時代。しかし年をとると若いころのようにはいかなくなる。仕事に忙殺され、日常生活に追われ、人生がパッとしなくなり、親も老いていく。そんな厳しい現実を直視せざるを得なくなる。やりきれない人生にため息を吐きながら、それでも「生きる」ことを引き受けねばならない。毎回思うが、河西さんの構成力はすごい。小説的でもあるのだけど、演劇でしかできないこと。

On7『ま◯この話〜あるいはヴァギナ・モノローグス〜』
素晴らしかった。これをやったOn7の勇気に拍手。戯曲は女性たちのモノローグだが、そこにOn7の女優7人の生の声も入れ、女性器というテーマを様々な角度から描いたパワフルな作品。今までのOn7作品のなかで一番On7らしかった。アメリカで96年に初演された作品だが、まったく違和感なく観れた。翻訳・演出の谷賢一は、戯曲の良さを引き出し、それを日本人に伝わりやすくアレンジし、オシャレでスタイリッシュな舞台に仕上げた。それをOn7がやることでそこに熱い生々しい力が加わった。幸福な組み合わせだ。演じている女優たちは一見あっけらかんとしているようだが、恥じらいがある。そこがいい。彼女たち自身の話をする場面は、笑わせられたり唸らせられたり。 戯曲に出てきた女性たちの声も含め、いったいどのくらいの数の女性器が登場しているのか。舞台上だけでなく客席も含めたら。

ジエン社『いつまでも私たちきっと違う風にきっと思われていることについて』
ロロの「いつ高」シリーズの二次創作。ロロのこの作品は未見なので、比較して楽しむことはできなかった。この作品単体として見ても、自分にとってはそれほど面白くはなかった。ジエン社はオリジナル作品のほうが好きだ。内容は高校を舞台に高校生たちの友情や恋愛、スクールカーストなどを描いたもの。ストーリー性はなく、一人ひとりのキャラクターを見せる感じ。周りからちょっと浮いてる女子高生がいる。でもほかの女子も、話をしてみるとみんなそれぞれ違っていて、浮いてないように見えても浮いている。いじめられてるわけではないけれど、ライングループに入れてもらえないなど、スルーされてる女子。本人はそんなことは気にも留めていないかのように振る舞っているが、実は気にしている。……とか、そういう感じの内容。

燐光群『ゴンドララドンゴ』
1980年代、ゴンドラに乗ってビルの外壁補修作業をしている男二人の身体が入れ替わる。入れ替わった男二人を通し、バブルの時代、バブルがはじけ地下鉄サリン事件が起きた1995年、そして現在、を描く。私はバブルを体験していないが、その時代の空気を感じることができた。良いことも悪いこともあった時代。私もバブルを体験してみたかった。私はバルブがはじけきった後の空っぽの時代しか体験してない。テロをはじめとした現代の問題に対する目線も鋭く、見応えがあった。

松尾スズキ作・演出『ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン』
内戦状態にある国で男娼をしているトーイ。人質にされた先輩を助けにその国にやってきた作家の永野はトーイに恋してしまい……。というようなボーイズラブの要素もあるもののそういう話では全然なかった。笑わせながら今の世界情勢のキツさを描いている。あまりにヘビーな内容。でもやっぱり面白い役者が変なことやったら笑っちゃうし、もちろん松尾さんもそれを意図しているのだし、笑い上等という感じ。一方で「これ笑っていいのかな?」と感じている自分もいて。降板した女優の話は、役名からすると実際にあったことをネタにしているのかも。だとしたらあまりに辛辣すぎるが。いろんなネタをはさんで観客を楽しませつつもテーマはシリアス。その匙加減がすごい。役者では岡田将生の凛とした美少年ぶりが印象に残った。

7月の観劇本数は5本。
ベストワンはOn7『ま◯この話〜あるいはヴァギナ・モノローグス〜』。