2016年12月に観た舞台

ドキュントメント『となりの街の知らない踊り子』観劇。北尾亘によるダンスを交えた一人芝居。現代社会に生きる複数の人の視点を通して、多角的に「現代」「東京」をとらえる。スマホSNS、人身事故──。都会には様々な「他者」がいて、それぞれ知らんぷりをしながら生きている。映像や文字を効果的に使い、複数の「場所」を浮かび上がらせ、「時間」をも越える。「街」が立ち上がり、そこに生きる「人」の存在が、ダイレクトに伝わってくる。理屈ではなく、感覚に訴えかけてくる。だから思わず心を持っていかれる。

チェルフィッチュ『あなたが彼女にしてあげられることは何もない』観劇。「カフェでの公演」というから、てっきりカフェのなかで芝居を観るのかと思ったらそうではなく、カフェのなかに役者がひとりいて演技(?)をして、それを外から眺めるというスタイル。イヤホンを装着するとなかの音が聞こえる。そうしたスタイルは面白かったが、芝居部分は退屈だった。女優が席について延々とポエムのようなセリフを言う。上演時間は30分と短かったが、そのセリフだけを聞かされていたら退屈だと思う。でもイヤホンからは営業中のカフェにいるほかの客の会話も聞こえてきて、それが面白い。

スザンネ・リンケ「ドーレ・ホイヤーに捧ぐ『人間の激情』『アフェクテ』『エフェクテ』」鑑賞。視覚的に楽しかった。ストイックだけどテクニカルなダンスは、生々しさがなく、身体で感じるというよりはじっくり頭を使って集中して観るタイプのものか。私の好みとはちょっと違ったけど、観れてよかった。

iaku『車窓から、世界の』観劇。3人一緒に電車に飛び込んだ女子中学生たち。彼女たちと関わりのあった大人たちが、彼女たちが飛び込んだ駅に集まり、いろいろ議論する。ストーリーといえばそれだけで、ほぼ会話のみ。にも関わらず濃い内容だった。様々なテーマがあるが、結論は出していない。

藤田貴大演出『ロミオとジュリエット』観劇。ロミオの青柳いづみはじめ、主要な男性キャラを女優が演じる。戯曲は解体され、二人が出会って死ぬまでの5日間を、二人が死んだ日から出会った日まで遡って描く。とにかく「音」がすごかった。空間がすごく美しかった。これは、藤田さんがいかに『ロミジュリ』を再構築して演出しているか、ということを観る舞台。逆に言うと「普通の」ロミジュリを観たい人には全然向かない。観客の反応が微妙だったのだが、藤田作品が初めての人が多かったのだろうか。ストーリーを追うため集中する必要もなく、リラックスして観られた。ただただ演出の技にうなり、女優のセリフに聞き入り、音にびっくりし、衣装や美術の美しさにうっとりした。なんかダンスを観ているときのような。実際ダンスシーンもあったけれど。

岩松了作・演出『シブヤから遠く離れて』観劇。ストーリー展開や演出や役者で魅せるのではなく、セリフを聞いてそこから観客が自由に想像を広げる、という系統の芝居。セリフの妙を味わえなければ楽しめない。集中力が必要。私は集中できず楽しめる要素がなかった。

劇団桟敷童子モグラ』観劇。大正時代末期を背景にした伝奇浪漫。今までの桟敷童子とは違う系統の話だが、演出や美術はいつもの桟敷童子なのでなんら違和感なし。話はよく考えると辻褄が合わない部分もあるが、まあそこは伝奇浪漫だからね。最後まで飽きずに楽しめた。

Q『毛美子不毛話』観劇。「女性」という性の面倒くささ、醜さ、滑稽さを真正面から、これでもかといわんばかりに描く。性表現含め、あまりの動物的な描写に目を背けたくなるのだが、思わず見入ってしまう。役者が相当巧みなのだが、これをやらせる市原佐都子はやはりすごい。


12月の観劇本数は8本。
ベストワンはQ『毛美子不毛話』。