2016年3月に観た舞台

Straw&Berry『モリー』観劇。やたらとダメ男にモテる女の子が主人公。彼女のルームメイトなどほかの登場人物の恋愛模様もさらりと描く。うーん、もっとほかの登場人物の話も突っ込んでほしかったかも。主人公の女の子に共感できず、あまり入りこめなかった。ラストのオチも弱い。

スタジオライフ『訪問者』観劇。やはり良い作品。またスタジオライフで観られてよかった。ラストは涙が止まらなくなった……。父と息子の話って(しかも本当の親子じゃないし)なんて切ないんだろう。グスタフ役の楢原さんが、妻に裏切られたことで苦悩しつつも妻や息子への愛を捨てられない父を好演。オスカー役の久保優二くんも健気さが出ててよかった。笠原さんのミュラーはすごくかっこいい!笠原さんは以前グスタフをやったことがあって、それもやさぐれ感が出ていてよかったのだった。今回のミュラーは前半はひたすら明るく、ラストは苦悩を滲ませて……と、同じキャラでも全然違う感情を豊かに表現していた。そして最後の山本ユーリとオスカーのやりとりには震えた。山本ユーリが天使のように見えた。ここからトーマにつながっていくんだよね……。

NODA・MAP『逆鱗』観劇。人魚が出てくる海中水族館。自ら人魚と名乗るおかしな女、そこに働く人々や電報を配達する男……。バラバラな要素がひとつになり、ある歴史的な事実に行きつく。……という、最近のNODA・MAPっぽい話なのだが、いまいちピンとこず。題材も「なぜ今これ?」と。コロスの使い方や美術はほんとうにきれい。言葉遊びもあるのだが今回は少なめ。言葉遊びというかオヤジギャグのように思えてしまうところも。。。あと全体的に、スピード感がなかったような気も。いつものNODA・MAP風だけど、いつもより控え目……という感じか。なにより、役者・野田秀樹の勢いがなくなってしまったことが寂しい。年だから仕方ないけども。。。以前はやたらめったら動き回り、これでもかというほどかん高い声でしゃべりまくり、それでいて一番いい台詞は全部持っていき、彼の台詞に胸を打たれる……という感じだった。でもそのかわりに(?)阿部サダヲがすごくよかった。前半のコミカルな感じはすごく笑えたし、今日はちょっとしたアクシデントもあって、その対応の仕方がさすがは阿部サダヲ!という感じ。彼の人柄の良さ、面白さがとても出ていた。後半の彼の苦悩もすごく迫ってきた。

劇団態変『ルンタ』観劇。すごいものを観てしまった……。態変は演出・出演などすべて身体障碍者で構成されている劇団。大阪を拠点に活動しており(海外公演も多数行っている)今回は12年ぶりの東京公演だという。ずっと観たかった。観られて本当によかった。身体障碍者たちがレオタード一枚で舞台に上がり、パフォーマンスする。セリフはない。皆、ごろごろと床を転がる。立てる人は立って歩いたり跳ねたりも。転がる、といっても、人によって動きは全然違う。その動きは演出されたものだけど、その人自身から出てくる動きでもある。一口に身体障碍者、といっても、それぞれ障碍の程度は異なる。手足の指がつながっていたり逆の方向に曲がっている人たちは、比較的軽度なほう。足は正常だけど腕が半分しかない人、片足が半分しかない人たちもいる。なかでも四肢のない、片方の腕だけが辛うじて20センチくらいある女性が転がりながら舞台に出てきたときには、衝撃を受けた。それぞれの障碍のある人たちが、みんなで舞台を転がり絡まり合う。ある瞬間にユニークな動きが出たりもする。皆、自らの身体を見せつけるかのように動く。見せつけるかのように、というのは私の感想かもしれないが。とにかくその人のその身体でしかできない動き、ほかの誰も真似なんかできない動き。この世で唯一の動き、身体。その一つ一つが彼ら個人の表現なのだ。圧倒的だ。パフォーマーたちは皆、自由だった。そして楽しんでいた。もちろん私も楽しんだ。彼らの身体、彼らの動きから目が離せなかった。私は今回が初めてだったので、ほかの作品との比較はできないが、とにかく終わったときにはすごい感動が込み上げてきた。カーテンコールでパフォーマーたちは、客席に向かっておじぎをする。もちろん身体がそのように動かない人もいるけど、それでも観客への感謝の気持ちや、や り遂げたという充実感、みたいなのが伝わってきた。四肢のない女性は、身体が動かないながらも頭を下に向けた体勢をとった。

地点『スポーツ劇』観劇。イェリネク原作のものを三浦基が構成・演出。演出のアイデアや役者の身体性など見るべきところは多いと思う。だが自分にはまったく響かず。役者のモノローグが続く、というスタイルはやはり苦手。イェリネクのテキストも頭に入ってこず。テキストはいろいろ変えているだろうが。

『地域の物語2016生と性をめぐるささやかな冒険〈女性編〉』観劇。募集によって集まった様々なバックボーンの女性たちが、ワークショップを重ねて自分 の「生と性」の物語を表現していく。下着の話、生理の話、性的虐待の話、母の話。個々の話が最後の普遍的なテーマに辿り着く、という感じ。ただ、全体的にメリハリがなく、散漫な気も。単に一人一人が話をして終わってしまうというような手ごたえのなさもあった。あと障害者をフィーチャーしすぎているのも気になった。最後のシーンを踏まえるとそうなってしまうのかもしれないが。せっかく個人的なことを話しているのに、顔が見えてこないというか。その点、チャコさんのシーンは印象に残った。自分の名前を述べた上で話をしていたからだろうか。クライマックスで木炭をつぶして絵を書いていた左半身が不自由な女性、見たことがあると思ったのだが、あとで調べたら、先日の劇団態変『ルンタ』に出演していた方だということがわかった。彼女は3月13日まで座・高円寺で『ルンタ』に出ながら、WSに参加し、そして3月20日にこちらの舞台に立ったのだ!その女性、小林加世子さんの表現に対するエネルギーがすごい。彼女のことを、ほかの出演者の一人が「セクシー」と評するのだが、確かに最後のシーンはセクシーというか、圧倒的な生命力を感じた。

東京デスロック『Peace』観劇。戦争、震災などの被害に遭った人たちの言葉などを使いつつ、いろんな角度から平和を問う。受付で荷物を預け、靴を脱ぐ。劇場には椅子がなく、床に座る。これは腰痛持ちには辛い。私はスカートだったので体育座りもできず、ずっと横座りで足を右へ左へもぞもぞ動かしてた。そういう舞台に限って上演時間が長かったりするから嫌だ。なんだかいつもより直球な気がして、観ていて疲れてしまった。時間も長い。そもそも私は政治的なメッセージが強すぎる芝居は苦手。テーマがテーマだけに真面目すぎる気も。

ミクニヤナイハラプロジェクト『東京ノート』観劇。最初のほうは、原作を知らない人にはよくわからないんじゃないだろうか……と思いながら観ていたのだ が、そんなこと関係なかった。そのくらい原作とは違っていた。もちろんエッセンスは残しているし、テーマも一緒なんだけど、アプローチが違う。政治的なメッセージが強く、今の時代に上演される意味のある芝居だと思った。だけど私は芝居というよりダンスのように観ていた。俳優の身体性に目を奪われた。演出・振付も緻密。とにかく動きや照明なんかを観ているだけで飽きない。教師と女子大生のシーンがやはり印象に残る。二人の動きは誇張されていて、滑稽でもあるしちぐはぐだという哀しさも感じた。

燐光群『カムアウト』観劇。27年前の作品。共同生活を送るレズビアンたちの小さなコミュニティの話だ。そこにはいろんな人がいる。自分のセクシャリティがなんなのかわからなかったり、家族との関係に悩んでいたり。共同生活だからそのなかでカップルができたり、三角関係や四角関係になったりする。そのシェアハウスは出入り自由で、いろんな人がやってくる。いろんな理由でそこを去る人もいれば、新しく入ってくる人もいて、入れ替わりが激しい。かと言って自由な雰囲気というわけでもない。新しい住人は「審査」されたりもする。そのへんはすごくナイーブ。ただ、時間が長すぎるし、一本のストーリーというよりも登場人物の人生の一場面を描いたような感じなので、途中だれる。主人公とその周辺の人との関係性も わかりづらい。主人公は結局誰が好きだったの?というかそもそも主人公が誰かもわかりづらい。皆が主人公のようなものか。皆が主人公、と考えると、あの長い時間にも納得がいく。誰を描くかというよりも、コミュニティを通してセクシャルマイノリティを描く、というテーマなのだ ろう。それにしても27年前の作品なのに現代にも通じるものがある。認知はされてきてるが、状況は変わっていないのかも。

カミグセ『隣の芝生の気も知らないで』観劇。初見の劇団だが、良くも悪くも想定内だった。いかにも女性作家らしい作風。女子中学生たちの日常を淡々とポエジーに描く。ストーリーらしいものはなく、引きこれるという感じではない。世界観は嫌いではないが、なにかが足りない。

3月の観劇本数は10本。
ベストワンは劇団態変『ルンタ』。