2016年2月に観た舞台

座・高円寺寄席へ。高円寺演芸まつりで、高円寺のあちこちで落語をやっている。今夜は古今亭志ん輔の『火焔太鼓』他一席、桂吉坊の『胴乱の幸助』他一席。志ん輔の人情話がすごくて、引き込まれた。上方落語桂吉坊も若いのにすごくうまくて、もう笑った笑った。うまい人の落語はほんとに面白い。

マームとジプシー『夜、さよなら』『夜が明けないまま、朝』『Kと真夜中のほとりで』観劇。夜三作の同時上演。『夜、さよなら』と『夜が明けないまま、朝』は初期の作品で、マームのファンでも観ていない人が多いもの。もちろん私も観ていない。今回はそれを観られるかと期待していたのだが、この「夜三作」に合わせて作り替えられており、二作品とも最後の『K』につながるように作られていた。つまり、全部同じ話だった。同じ話を角度や人や時間を変え、繰り返し語っている。ちなみに『K』は再演。初演はアゴラで上演され、かなりの好評を得た作品だ。ストーリーは、10年前にいなくなってしまった『K』のことを、10年後のその日の真夜中に、Kと関わった人たちが彼女のことを想い、彼女の話をしながら、あてどなく街をさまよい彼女の姿を探し続ける……という感じのもの。Kとの関わり合いはそれぞれで、兄だったり友だちだったり、単なるクラスメートだったりする。関わりが深くても浅くても、それぞれの人にとって特別なKとの時間がある。マームとジプシーならではのリフレインという手法、俳優たちの身体性、そして選び抜かれた音楽に衣裳。藤田貴大の独特の「夜」が現出していた。しかし、初演に比べると空間が広いぶん散漫な感じも。初演のときのような、容赦なく夜に引きずりこまれる感がなく、淡々としていた。初演では役者の運動量がもっとすごかった。でも今回は、役者は動いてはいるし、エモーショナルな部分もあるけれど、全体的にはスタイリッシュで無機質な感じがした。空間の使い方とか美術、衣裳、音楽がそういう感じだからだろうか。初演のエモーショナルな部分が抑えられ、より洗練されたという感じ。これが今のマームとジプシー、なのだろう。

スタジオライフ『トーマの心臓』初日観劇。1996年の初演からキャストを替え上演され続け、今回で9度目の上演となる劇団の代表作。今回はユリスモールが山本芳樹、オスカーが笠原浩夫、レドヴィが石飛幸治と、初演のころのキャストが復活!懐かしさだけで涙出そうだったけど、クオリティも相当高い。もちろん20年も経てば役者は年をとっているんだけど、そのぶん積み重ねられたものがあり、一人ひとりのこの作品にかける想いがすごく伝わってきた。やはりスタジオライフにとってトーマはバイブルなんだね……。大切に大切に上演され続けてきた作品。安定のキャストだからこそ、こちらも安心して観られたというのもあった。舞台も客席も異様な緊張感に包まれ、最後まで誰一人台詞を噛んだりもせず雰囲気を壊さず、本当に濃密で素敵な時間が流れていた。良い初日だった。スタジオライフは観客のマナーもよくて、集中して観られる。観客にとってもトーマは大切な作品。初演から観ている人にとってはなおさら。最初のアヴェ・マ リアが流れた瞬間、みんなが舞台を食い入るように見つめる。役者も観客もともに舞台に身を任せる。終わったときにはなんとも言えない充実感が。。。

二月のできごと『からす食堂』『黒い三人のこども』観劇。佐久間麻由が企画した池尻大橋のガレージでの公演。すごい手作り感があり、寒いガレージのはずなのにあったかかった。美術が素敵だし、客席の配置や役者の動きも含めた空間の使い方が面白い。芝居は二本とも江本純子が作・演出したもの。『からす食堂』は10年前の戯曲とのことだが私は初見。からす食堂の店主と客のやりとり。変な店主の江本さんがとにかくよくしゃべる。客の富岡晃一郎さんの反応も面白い。『黒い〜』は新作。お葬式を描いたもの。前半は不条理劇のような。うーん、これは私にはあまりピンとこなかった。なにか実験的なことをしたいのかな?とは思ったけど。江本さん、今後はどんな方向に行くんだろう……。

2月の観劇本数はなんと4本。少なすぎてびっくりぽんや。