2015年8月に観た舞台

KAATで、岡田利規台本・演出『わかったさんのクッキー』観劇。劇場内に色とりどりのおもちゃが。そして、椅子ひとつひとつにクッキーのクッションが置かれていたりなど、様々な工夫が。芝居もいろんな仕掛けがあって面白い。子どもたちが目をきらきらさせていた。子どもと一緒に観たらもっと楽しめるだろう。

立川けやき座の杮落とし公演へ。劇団朱光さんのお芝居と舞踊ショーを堪能。大衆演劇を観るのは三回目だが、やはり独特の世界だ。今回は特に杮落としということもあり、周りの観客のノリがすごかった。贔屓の役者が出てくるとあちこちから掛け声がかかる。舞踊ショーではお花をつける(踊っている役者の襟元や帯に万札をクリップ留めする)客多数。それも5万円とかだ。すごい。芝居自体も面白かった。全体的に緩い雰囲気だったが(大衆演劇はそうしたものだ)、そういう雰囲気も含めて楽しめる。またぜひ行きたいものだ。

浅草公会堂で、『南の島に雪が降る』観劇。原作は加東大介。彼自身の従軍経験の手記を舞台化したもの。太平洋戦争末期のニューギニア。いつ終わるとも知れない戦争で、兵士たちは毎日、飢えとマラリアでばたばたと死んでいく。そんな過酷な状況のなか、加東大介は演芸部隊を立ち上げ、ジャングルの真ん中に日本の舞台を作る。女のいない戦場にいる兵士たちは、女形を見て「女だ!」と心を躍らせる。そして、紙で作られた雪を降らせると、兵士たちは日本を想い、涙を流す……という、感動的な話。去年、ベッド&メイキングスの野外劇を観て感動したし、丸山厚人さんや笠原浩夫さんという私の好きな役者が出ているので楽しみにしていたのだが、今回の舞台はちょっと残念な出来。大和悠河が出演していたため、彼女の出番を作るために原作が書き換えられていた。芝居の途中で唐突に彼女のショーが入ったりなど、大和悠河のファンサービス的な演出が多かった。確かに客席には彼女のファンらしき観客が多かったが……。だが、それ以外の芝居の部分はよかった。最後、『瞼の母』が演じられ、舞台に紙で作られた雪が降る。東北の部隊の兵士たちは、それを見て「雪だ!」と喜びながら死んでいく。そのシーンはとてもよかった。

新橋演舞場で『もとの黙阿弥』観劇。愛之助目当てです。井上ひさしの戯曲が面白い。ありがちな話だけど、大衆的な感じで、劇中劇あり、歌や踊りも入ったりなど、全体的にまったりと進む。変に頭を使わず気楽に観れるので、3時間半と長時間でも疲れなかった。役者も観客もゆるく楽しんでる感じがいい。

『15 Minutes Made』観劇。6つの団体が15分ずつの短編作品を上演する企画で、今回が13回目になる。コメディあり、シリアスな会話劇ありで、どの劇団の作品も面白かった。お目当てのStraw&Berryはやはりよかった。絶望の果てにある愛とか優しさを描いている。

庭劇団ペニノ『地獄谷温泉 無明ノ宿』。いつもとはちょっと違う味わい。中二病の妄想的なものではなく、父と息子の葛藤や、子どもが欲しい女など、人間の本性を描いている。さびれた温泉宿に宿泊する人間たちの生態を、変態的にユーモラスに描く。それでいて哀愁が漂う。切ない話だ……。観る人によって様々な解釈ができる芝居。

シス・カンパニー『RED』観劇。ジョン・ローガン作、小川絵梨子演出。実在の画家マーク・ロコスを田中哲司さん、その助手のケン(架空の人物)を小栗旬さんが演じる二人芝居。舞台はアトリエ。二人は芸術論をたたかわせながら、実際にキャンバスを張り、絵の具を混ぜ、色を塗る。大きなキャンバスに、二人が絵筆を持って赤色を塗りたくるシーンはリズミカルで迫力があった。二人が身体を動かしながら真剣に議論する様は、そのまま俳優としての二人の闘いにも思えた。田中哲司はこういう、ちょっとアウトサイダー的な芸術家の役が合う。彼は最初から最後まで、自身の芸術について延々としゃべっている。現実の社会に対する怒りや憤りなどのネガティブな感情もぶちまける。商業的成功のために主義を曲げて大きな仕事を受けたことで、さらに憤りが増していく。堂々と自分の意見を主張しているようでいながら、ロコスは苦悩し、迷っているのだ。ケンは、横暴なロコスに従いつつも、ロコスが主義を曲げて商業的な仕事を受けたことに反発したり、後ろ向きな彼の発言に抗議したりする。それでいて、才能ある画家としてロコスを尊敬し、ときおり父親に対するような親しみを抱いているのも伝わってくる。ケンは幼いころに両親を殺されたという過去があり、家族というものがいない。そんなケンにとって、ロコスは単に師匠というだけでなく、初めて真正面から対峙することのできた人間であったのかもしれない。ケンは感情の振れ幅が大きい役だが、小栗旬はその匙加減がうまい。

8月の観劇本数は7本。
本数は少ないが、浅草公会堂や新橋演舞場など、普段滅多に行かない劇場に行けて楽しかった。あと立川けやき座の杮落しに立ち会えたのも嬉しい。