2015年2月に観た舞台

『自作自演』江本純子×飴屋法水。ただのリーディングではなくパフォーマンス。江本さんは自分の小説に登場する複数の女たちを「演じて」おり、それが見 事。飴屋さんは音響ブースで様々な音を遊びながら『教室』『ブルーシート』『地面』を読むパフォーマンス。二人の作品の共通点は「性器」だった?

Straw&Berry『ワンダーランド』観劇。この世に同じ名前の人はたくさんいるし、似たような境遇で似たような恋愛をしている人も腐るほど いる。だけど、他人から見たらありふれた人生に陳腐な恋愛だったとしても、当人にとってはかけがえのない人生であり、取り替えのきかない恋人なのだ…。そんなどこにでもあるような物語を、似たようなシチュエーションの二つの物語を同時進行させることで興味深く見せる。最後のオチで、全部幻だったのかもし れない、と思わせる。愛って、あるかどうかわからなくて、だから人は不安になって必死に確かめようとするのだ。構成が巧み。

DULL-COLORED POP『夏目漱石とねこ』観劇。静かで丁寧なお芝居。障子と照明の使い方が素敵。夏目漱石が死ぬ間際のエピソード、英会話教師時代のエピソード、子ども時 代のエピソードなどを、それぞれねこを交えながら描く。興味深くはあったが、あまり迫ってはこなかったかな・・・。

ゴキブリコンビナート『ゴキブリハートカクテル』観劇。アトラクション演劇シリーズ第三弾。客はいきなり真っ暗闇のなかに投げ出され、手で壁や床を確認し ながら這って進む。観客は4人一組で、物語に強制参加させられる。見知らぬ観客同士が協力し合って進んでいく・・・という、危険極まりないゲーム。これまでの巡回型演劇と比べても今回は相当ハードだった。なんか身体的にも疲れたし私は素手だったので、ミミズやゴキブリを触らせられたのはちょっと・・・。ゴキブリのエキスで作ったという血のようなカクテルを飲まされた女の子がちょっと可哀相だった・・・。だんだん過激さが増しているような気がして、それはそれで面白いのだけど、なんだか観客にとって敷居が高くなりすぎているような気がする。観客は皆、わかっている人たちで、レインコート持参はもちろんのこと、マスクに軍手と、ぬかりない(私はレインコートだけだった)。従来のファンに加え、若くてちょっと感度の高い人たちが噂を聞きつけて見に来て(勝手な想像ですが)、「こんなことじゃ驚かないぜ」みたいな感じで、笑いながら見ている。それにちょっと違和感。だって以前は、観客が怒ったり泣いたり途中で帰ったりしていたのに。作品として完成度が高くなったということなのだけど、その一方で、それについてこれる観客しかいなくなってしまった・・・ということなのじゃないか。なんか、観客全員がファン、というのはそれはそれでいいのだけど、開かれてない、ってことにならないか?とかちょっと思った。なんだか、観客が楽しんでいるのはもちろんすごくいいことなのに、それにちょっと淋しさを覚えてしまうのはなぜだろう・・・。もっと怒る観客がいたり、本気で怯えて逃げ出す観客がいたり(今回は逃げようと思っても逃げられない、のがミソだけども)するのが面白かった気も。観客がノリノリすぎるのも逆に引く、というか。私の回だけかな?よくわからないのに連れて来られて怒ったり泣いたりした人もきっといたんだろうな。そういう人にはご愁傷様としか・・。私も友人を一回連れて行ったことがあるが、「もう二度と嫌だ」と言われたもんな・・・。まあ、観客云々は本質的な問題ではないかもしれないから置いておいて、今回もまた、期待を裏切らない過激さ、アトラクションとしての完成度の高さ、汚さ、危険さ、きつさ、すべて素晴らしかったです。はい。私は本気で驚き、震え、怯え、泣きました・・・。怖い、けど面白い。あと、役者で、毎回出ているスピロ平太とか病気マンとかオマンサタバサが出ていなかったのが淋しかった。新しい役者が増えていた。すごい美形の女優さんが身体張ってたり。やっぱり一部の役者にとって、ゴキコンって「出たい!」と思わせるなにかがあるのかもしれない。

青木豪演出『The River』観劇。ロンドンで注目されている劇作家ジェズ・バターワースの作品。ストーリーがなく、男女の抽象的な会話が繰り返され、現実と幻想とが交錯 する。うーん、私の苦手な系統の芝居。よくわからないというか、普通に観てても頭を素通りしてしまう感じ。

2月の観劇本数は5本。
ベストワンはゴキブリコンビナート『ゴキブリハートカクテル