2014年7月に観た舞台

東京デスロック『セレモニー』。様々な儀式に参列するなかで、「時間の区切り」をつけることや自分と人との関係性を確かめること、そして日本人であると自覚することの意義を感じさせられたような。儀式というのはカタチだけれども、そのカタチすらなくなったら、ほんとになにもなくなってしまう。

中野成樹+フランケンズ2014『天才バカボンのパパなのだ』観劇。別役実原作のものをナカフラテイストで。台詞や状況の不条理さを淡々と見せて笑わせる。けど、私が別役戯曲の面白さをよくわかっていないということもあり、なんか地味な気が。いつもの誤意訳のほうが好き。

ハイバイ『おとこたち』観劇。タイトル通り、四人の男たちの人生を描いたもの。誰にでもいいときもあれば悪いときもあるし、どんな人生を送っていても、その先には老いや死が訪れる。描いている内容はそんなシンプルなものなのに、この胸にズシンとくる感じはなんなんだろう。ただただ切ないような。

三浦大輔作•演出『母に欲す』観劇。本当にいい芝居だった。懐かしいような、温かいような。「母さん!」と呼ぶ声が、なんて切なく甘いことか。峯田和伸の歌う歌がすごく染みる。「母に欲して、欲して、欲して〜」。母の愛、母への想い…。それは自分にもわからない、心の奥底から湧き上がる熱い想い。

飴屋法水作•演出『教室』観劇。飴屋さんの作品は、痛いところを突いてくるな。他者と比較して自分は幸福だとか幸福じゃないとか、そうやって俗にまみれて生きる人間って、自分ってなんなんだろう…。なんでこんなにイラついたり、欲求不満になったりしないといけないのか。この芝居みたいに、もっと超越できないのか、自分は。ただ在るというだけで、なんで満たされないのだ?人間だから?私は、蝉が幸せかどうかなんて、考えたこともなかった。幸せって考えるものじゃないんだな・・・。

篠原演芸場にて章劇を観た。初めての劇団。ミニ舞踊ショー、芝居、舞踊ショーの三部構成。芝居は『裸千両』。喜劇で、ベタな話なのだが、それゆえかえって笑える。役者はとくにうまいわけではないのだが、笑いを誘う演技。アドリブも満載で、役者も素で笑っていたりして、なんか大らかな感じだった。舞踊ショーもよかった。特に副座長の澤村蓮様が素晴らしい。女形はたいへん美しく、踊りもきれい。指先の動きがすごくきれいだった。着物は赤いバラの花の模様で、どぎついのに不思議に魅力的に見える。それとは別に男らしいダイナミックな踊りも披露。これもまたかっこよく、素敵だった。澤村蓮が華やかに舞った後で、座長が登場したのだが、なんだか華やかさに欠けていたというか、地味だったような。踊りも歌も特別よいとは思えず。蓮様のインパクトが強かったからだな。

前川知大作、蜷川幸雄演出『太陽2068』観劇。面白かった!イキウメ版より好き。イキウメはSFテイストでストイックな演出だったけども、そうだよ、これはこんなふうに熱くドラマティックにやったっていいんだよ!と思った。そしてやはりスター芝居はいい。華があるだけでなく確かな技術がある。綾野剛がストレートに苛立ちや焦りをぶつけるシーン、鉄彦の純粋さが伝わってきて泣けてしまった。鉄彦は、自分がなにも知らないということを知っていて、だから焦ってノクスになりたがっている。ノクスになって知識を得て、変わることを切望している。前田敦子もよかった。このままじゃいけない、なんとかしなくては、と思っているのに、あまりにも無力で、立ち向かうものの大きさの前に絶望する。その絶望が深い分、その後の展開がいろいろ切なすぎる。

猫のホテル『愛さずにはいられない』観劇。客演が三人いるのは新鮮。昭和な雰囲気はいつもの猫ホテだが、今回はストーリー重視で笑いが控えめだった気が。ヤクザの女を演じた佐藤真弓、姐さんの迫力と色気と滲み出るおかしさが絶妙。市川しんぺーのヤクザには笑った。死んでも死に切れないのか…。

7月の観劇本数は8本。
ベストワンはハイバイ『おとこたち』。