10月に観た舞台

サウンド・ライブ・トーキョーへ行って来た。倉地久美夫+マヘル・シャラル・ハシュ・バズ。マヘル〜が面白かったなあ。音楽家/陶芸家の工藤冬里さんが招 集する不定形ユニット。詩の朗読をヒップホップに乗せて。聴いているうちに言葉も音楽もそれ自体の意味をなくしていくような感覚に。

渋さ知らズ行ってきました。最高!音楽の嵐!美術も圧巻。舞台に船が現れたと思えばなんと巨大な龍が客席を舞う!まさに祝祭。舞台も客席も大盛り上がり。 桟敷席は総立ち。皆本当に楽しそうに踊ってた。かなりテンション上がったが、終わってみると4時間ぶっ通しだったのには驚いた。

サウンド・ライブ・トーキョー『飴屋法水×工藤冬里』へ行って来た。飴屋さんのパフォーマンスはもともと好きだし、工藤さんも前日観たパフォーマンスが面 白かったので期待して行った。だが不完全燃焼だった・・・。今の日本の状況に対する鬱屈とした思いは伝わってきたけれど、迫ってこない。

表現・さわやか『ストレンジ ストーリーズ』観劇。ちょっとファンタジックな内容だった。笑いはいつもより少なめかな?今回は「ツッコミタイム」なるもの が設けられていた。自由席のお客さんがツッコミシートをくしゃくしゃに丸めてボケている役者にそれをぶつける・・・という。なんかバカで笑えた。表現・さわやかは、しかし、イケテツが女装して出てくるだけで、なんか笑っちゃうね。あといつものことだけど、今回特に衣裳がすごい凝っている。マックとかウェンディーズとか魔法使いとか楳図かずおとかナウシカとか。なんなのよそれ?という感じで笑える。

アメリカン・ラプソディ』を観た。ケイ・スウィフト役の毬谷友子ヤッシャ・ハイフェッツ役の斉藤淳が、ガーシュインに関する往復書簡を交わしていると いう設定。リーディングで手紙を読み上げながら、佐藤允彦によるピアノ生演奏が入る。うーん、話は退屈で、ピアノもいまいちだったかな・・・。

快快『6畳間ソーキュート社会』観劇。自分にとっては久しぶりに演劇の醍醐味を感じた作品だった。楽しくて面白くて何度も笑った。同時にすごく切ない。「宇宙」や「未来」という言葉はキラキラしていて可能性を感じさせるけど、なにより今ここにいること、くだらない些細なことが本物で大切なんだ。快快観た帰り道、渋谷の街を歩いたら、目に飛び込んでくるものすべてがキラキラ輝いて見えた。なにもかも、どんな人も、無駄なものや人なんてなくて、この世に存在する意味があるし、それを必要としている人がいる。そう思ったら愛しくなって、泣きたくなった。

池田扶美代×山田うん『amness』観劇。すごくよかった。二人で作った作品だが、息がピッタリ合ってるという感じではなく、かといってバラバラでもなく。互いの個性や存在感を生かしつつ、目に見えないノイジーな部分を共有しているような。ものすごく自然で心地よい。不思議な安定感と刺激。サックス五重奏を使用したバッハの音楽もすごくよかった。オーストリアでの公演のときは生演奏だったそうで、それも観たかったなー。でも生演奏じゃない今回の作品は、なにもない空間に立つ二人の姿が、とてもストイックで惹きつけられた。山田うんはもともと好きなダンサーだったけれど、今回、池田扶美代のなんというかユニークさを見れて、とてもよかった。私はローザスでの彼女の踊りは観たことがないし、昨年のKAFE9での彼女のソロもあまりぴんとこなかったのだけど、今回はすごくよかった。

文学座アトリエの会『未来を忘れる』観劇。松井周さんが初めて文学座に書き下ろしたもの。松井さんらしいシュールな内容。未来を極端に描いたSFっぽい話 でもあるんだけど、それもこれも今の日本の置かれている状況に危機感を抱いているからこそだと思った。映像の使い方など、演出も凝っている。

NODA・MAP『MIWA』観劇。美輪明宏の生涯を描いた舞台。実在の人物が出ている芝居だからか、いつもよりかなりわかりやすく、抽象度が低い。言葉 遊びなども少ない。私が野田芝居に期待するような「なんかよくわからないけど美しい」みたいな感じではなかったけど、すごく面白かった。歌の力というのは本当にすごいものだと思った。理屈抜きで人を惹きつける。もしかしたら小難しいリリカルな台詞とかより、説得力があるかも。出ずっぱりで 美輪明宏を演じた宮沢りえがとにかく素晴らしい。いつもに比べリアルな芝居ではあるけど、だからこその面白さがあったと思う。

鳥公園『甘露』観劇。すごく意欲的な作品で面白かった。三鷹の奥行きのある空間を生かした舞台美術が素晴らしい。バイト先で理不尽な目に遭ってる男の子と か、ダサくて他人に笑われてる女の子とか、現代日本を現しているかのような登場人物たちが、「1万年後の日本人」について想いを馳せる。ストーリーとかはないんだけど、そこにいる登場人物たちの状況?を味わう芝居。エピソードがいろいろあって、あるシーンに出ている人物が、途中から別の シーンの人物と会話をはじめたりする。そういう手法は過去にイキウメでも観たことがあるが、うまいなと思った。無理がないし、新鮮。1万年後の人類のことを考えてるのに、子供を産もうとしていないのは生き物としておかしい、というような登場人物の台詞があった。生き物は、命をつないでいくのが使命だ、と。この芝居はそういう考え方を肯定しているわけではない。命をつなぐってなんなんだ。1万年もつなげないし。ごくごく現代的な日本の人たちを描きながら、ものすごーーーく長いスパンで人類のことを考えている芝居なのかも。1000年後は「日本人」はいなくなっているかもしれない、という。そんな先のことなんて今生きてる人にはわからないけど、でもそれは起こることであって。なんだかものすごく遠くのことに想いを馳せてしまった。宇宙とか、未来とか。それが今いる私たちの現在と繋がっている、ということ。最近の鳥公園のなかでも極めて意欲的で、力を入れて作られた作品だと思った。舞台美術とかも含め。だけど終わり方があっけないと思った。けどたとえば人類 の終焉とかはそういう感じなのかもと思い、そう思うとあの終わり方でよかったのかも、と思うが、もっとあの世界に浸りたかった気も。

スガダイロー5夜公演『瞬か』観劇。フリージャズピアニストのスガダイローが、様々なパフォーマーと即興でやるライブ。物凄かった。狂ってる…。あり得ない超絶技巧。スガダイローが狂ってるならダンサーもまた狂ってる。岩渕貞太とスガダイローの、互いに刺激し合い挑み合う真剣勝負には心底痺れた。

10月の観劇本数は11本。
ベストワンは快快『6畳間ソーキュート社会』。