3月に観た舞台

箱庭円舞曲『円』観劇。10編のオムニバスで、いつもの箱庭よりやや軽めのテイスト。ひとつひとつの話が短いこともあり、最後まで飽きずに楽しめた。観たからといってなにか考えさせられるということもないが、気楽に楽しみたい人にはいいのでは。

『ルル』観劇。原作を知らないので、ストーリーがよくわからなかったが、刺激的な演出で最後まで飽きずに観れた。ルル役の女優、すごくいい。野田秀樹がチラシのコメントで「エロカワイイ」と評していたが、まさにそんな感じ。金髪で色白で豊満な肉体…私は彼女の大きな胸にくぎ付けだった。

ナイロン100℃『デカメロン21〜或いは、男性の好きなスポーツ外伝〜』観劇。すごく面白かった。さまざまなエピソードが次々出てきて、飽きさせない。メタ演劇っぽい構造にもなっている。KERAの作品はいろいろ観ているが、本当に幅の広い劇作家だと思う。シリアスからコメディまで。内容は、艶笑劇とのことで、かなりエッチな感じだった。セックスとかマ○コとかチン○といった言葉が連呼される。特にマン○、マ○コと出演者が絶叫しながら合唱するシーンはウケた。ダンスシーンが多かったのも華やかでよかった。女優たちが色とりどりの下着姿で登場し、エロティックなダンスを繰り広げる。普段小劇場で観ている女優がたくさん出ていた。安藤聖松本まりか、熊川ふみ、森本華、望月綾乃。なかでも安藤聖は、恐るべき可愛らしさを発揮。彼女のエロのシーンも相当あるのだが、彼女はエロいことをしても下品にならず、あくまで上品で純粋。その笑顔に癒される。そして彼女は意外に胸が大きいことも発見だった。

スタジオライフ『続・11人いる!』観劇。私が観たJチームは、タダ役を山本芳樹が、フロル役を及川健が、マヤ王バセスカ役を曽世海児が演じた。役者はどの人もよかった。『11人いる!』ほどの疾走感はないが、十分面白かった。原作読んでるけど、最後のシーンとか少し忘れてたので、新鮮だった。

アマヤドリ『月の剥がれる』観劇。面白かった。広田淳一さんの書く脚本は、本当に面白い。物語が面白く、よくこんなこと考え付くな、と感心してしまう。演出も、ダンスを多用した躍動的なもので、二時間半という時間もちっとも長く感じない。観ている間中、興奮していた。詩のような台詞が好き。

北九州芸術劇場プロデュース『LAND→SCAPE/海を眺望→街を展望』観劇。すごいものを観てしまった、素晴らしすぎる。静かな深い深い悲しみが胸に迫ってくる。役者たちも皆すごかった!演出も洗練されてきた。これはすごいと思う。過剰なまでのセンチメンタリズム、私は好きだ、私に合っている。実家に帰りたいのに帰らないとか、そういうのが自分にリンクして考えてしまう。藤田さんは、地方出身者の気持ちがよくわかっている。

キラリ☆ふじみレパートリー『ハムレット』観劇。やっぱり多田さんの作る舞台は面白いなあ。毎回ドキドキワクワクさせられる。今回はハムレットを多田さん流に翻案。米村亮太朗さんのハムレット、すごくよかった!ひとつの場所で上演するのではなく、スクリーンに映されるテキストに従って観客が場所を移動して観劇。その試みが新鮮だったし、私が観劇した日は天気が良く、暖かい中、劇場のあちこちを移動して歩いていたら、ものすごい多幸感に包まれた。キラリ☆ふじみはほんとにいい劇場だなあとつくづく思った。スタッフの対応もいい。

月刊「根本宗子」『今、出来る、精一杯。』観劇。すごく面白かった。登場人物はどの人もすごく面倒くさい。面倒くさい人同士が、相手に理解されたがったり、理解できなくて修羅場になったりする。それでも生きていること自体に価値があって、生きてればなんとかなる、というポジティブさがある。すごく勇気をもらえた。観てよかった。

クロムモリブデン『連続おともだち事件』観劇。クロムモリブデンは何年か前に一度観たことがあるのだが、あまりピンとこなくて、それ以来観てなかった。今回は評判が良いみたいだったので、久しぶりに観たが、やっぱりあまり自分には合わないかなあ。話は面白かったが、派手な(?)演出が合わないのかも。

山田うんロダンス『ディクテ』観劇。面白かった。ダンスと銘打ってはいるが、原作テキストもある一人芝居のような趣。観客に語りかけるようなスタイルがよい。床に敷いた黒板にチョークでどんどん絵や文字を書いていって、それがスクリーンに映される。チョークで書かれた絵や文字の上を彼女が裸足で歩いたり踊ったりして、足跡がついていくのが美しかった。テキストは原作のものと彼女自身の言葉とが混じり合っているのだという。男と女とか、父と母とか、舞台と客席とか、対立するようでしていないもの。原作も読んでみたい。

トラッシュマスターズ『来訪者』観劇。劇団初見。日本と中国の関係を描いた政治劇なのだが、日本人、中国人、それぞれの立場のそれぞれの人たちの想いが丁寧に描かれている。終盤はドラマティックな展開も。だが、政治劇であまり共感できなかったからか、自分の好みではなく、ひっかかる部分はなかった。

ワワフラミンゴ『馬のリンゴ』観劇。劇団初見。ストーリーのない芝居だが、女の子たちのファンタジックなおしゃべりが続く感じは嫌いではない。吸血鬼の女の子や幻想の女の子がいる。現実の女の子たちの会話も、どこか現実離れしていてフワフワしている。もっとフワフワ感を味わいたかった。上演時間がもうちょっと長くてもよかったかも。

赤坂大歌舞伎『怪談乳房榎』観劇。面白すぎる!本水を使ったケレン味のある演出。これぞ歌舞伎の醍醐味。勘九郎は、正直者の下男の正助、小悪党の三次、そして絵師菱川重信の三役を見事に演じきった。全く性格の異なる三人をそれぞれ丁寧に演じ分け、そして目を疑うほどの早替わり!わけがわからない。一体裏ではなにが起こっているんだ!とにかく勘九郎がすごすぎる舞台だった。仰天の早替わりや見事な演技で、最後まで、細かいところまで観る者を惹きつけてやまない。このサービス精神と愛嬌は父親譲りか。勘九郎は舞台上で、勘三郎に重なった。声や仕草も似ている。最後の滝の場面はすごかった。正助を殺そうと追ってきた三次。二人のやり合いを、勘九郎が瞬時に交互に早替わりして演じ分ける。どうなってるんだ!?と目が点に。衣裳などの早替わりにも目を奪われるが、それより瞬時に全く違う役柄によく替われるなと感嘆してしまった。歌舞伎を観るのは久々だったが、また機会を作って観に行きたい。

名取事務所『ピローマン』観劇。なんという血なまぐさい残酷な恐ろしい衝撃的な舞台なんだと思い、戦慄しながら観ていたら、後半思いがけないところから希望の灯火が灯され、静かな感動がやってくる……。なんてすごい戯曲だろう。役者もセリフは噛んでいたけれど、どの人も熱演。小さな空間で観られてよかった。それにしても、劇中で語られる子供虐待にまつわる童話がトラウマになるほどすごく怖くて痛い。ただでさえ怖いストーリーなのに。役者のセリフがその出来事を生々しく想像させるので、痛い、痛い、助けて、と思いながら、でも一瞬たりとも目を離せずに、息をつめて観ていた。

地域の物語『みんなの結婚』観劇。世田谷パブリックシアター主催のWSで集まった46名の参加者が、3コースにわかれて「結婚」をテーマにした作品創りに取り組んだ。Aコースは吉田小夏が進行役を務め、出演者それぞれの言葉を台本にしたもの。すごくリアルな台詞が多く、身体の動きも面白かった。Cコースの『ふたり』は、渋谷の街でカップルを取材したものをもとにしたダンス仕立てのもの。身体表現は面白いとは感じたものの、芝居としては私にはあまりピンとこなかった。テーマも、あまり伝わってこなかったような。Bコースの『100の結婚』を私は一番興味深く観た。このコースでは長年連れ添った夫婦だけでなく、国際結婚のカップルやレズビアンカップルなどを取材して台本を構成している。常識に囚われないやり方で「結婚」を表現しようという姿勢が挑戦的だと感じた。『100の結婚』のラストで、レズビアンカップルが二人ともウエディングドレスを着て嬉しそうに結婚式を挙げている姿は、ちょっと泣きそうになった。マスターの台詞「結婚はエロスだ、抱擁だ!」というのもいいね!

ストリンドベリ作、青山真治翻案・演出『私のなかの悪魔』観劇。男と女のスリリングな会話劇。もちろん、数年ぶりの舞台出演となった高橋洋目当てである。洋さん、相変わらず素敵だった。嫉妬深い夫の役を、情熱的に演じていた。とよた真帆演じる奔放な妻も魅力的だった。

吾妻橋ダンスクロッシング2013春』観劇。面白かったー!今回はラインナップが華やかだったな。どれも面白かったけど、以下、特に印象に残ったもの。
東葛スポーツの毒舌に痺れた。佐々木幸子と松村翔子のユニット。この二人だとなに言っても嫌味にならないし、なんか爽快だった。映像もいい。
core of bellsは何度か観ているが、相変わらずキレキレのすごい音!今回はストーリー?もあって、より一人ひとりの個性が出ていて、面白かった。
室伏鴻×大谷能生、これもすごかった!音と身体に魅了される。だんだん増えていくダンサーたちが静かに痙攣する様は、鳥肌ものだった。
遠藤一郎を観るのは二度目だが、やはり面白い。観ている側が不安になるほどの異様なテンション。客席の空気を読んでないかのような突っ走り感。意味がないといえば意味がない舞台を一人でやるという度胸。言い方はアレだが珍しい生き物を観ているような感じ。
マームとジプシーも相変わらずいい!これまでの作品とも繋がるテーマだが、新たな視点も。このノスタルジーが好き。これが進化したものをまた別の作品で観れるのかと思うと、すごく楽しみ!
そして一番すごかったのは、やはり飴屋法水×青柳いづみ。音も言葉も響いてくる。痛い。15分の舞台なのに、ここまで作り込んでいることに驚かされる。飴屋さんの姿を見ていると、泣きそうになる。

3月の観劇本数は17本。
ベストワンは北九州芸術劇場プロデュース『LAND→SCAPE/海を眺望→街を展望』、赤坂大歌舞伎『怪談乳房榎』。
ほか、ナイロン100℃『デカメロン21〜或いは、男性の好きなスポーツ外伝〜』、キラリ☆ふじみレパートリー『ハムレット』、名取事務所『ピローマン』もすごくよかった。