10月に観た舞台

音楽劇『ファンファーレ』観劇。つまんなかった…。音楽はともかく、話がつまんなすぎ。子供向けのような内容。もっと音楽とストーリーが密接に結びついた、ミュージカルみたいなものになってれば面白かったかも。しかしながら、ストーリーがつまんないことにはやっぱり観ててつまんないんだよね・・・。音楽でごまかされることは決して、ない。「音楽劇」としては中途半端というか、ストーリーと音楽がうまく機能していないというか、それ以前にとにかくストーリーが稚拙すぎ、つまらなすぎ。なんでこんなに子供向けのような芝居にしたのか、正直意図がわからず、戸惑ってる・・・。

劇団、本谷有希子『遭難、』観劇。私は初演も観ている。序盤はややテンポがよくない気がしたが、終盤の台詞の応酬がやはりすごく、見ごたえがあった。代役の菅原永二さん、意外にもすんなり役にはまっていて、よかった。しかし、キャストが変わったことで初演と印象ががらりと変わった。個人的には初演時のキャストのほうが好み。特に石原先生役は、吉本菜穂子の気弱で卑屈な感じがすごくよかったんだよな。里見に利用されてる感があって、それが途中で変わっていく様がよかったんだけど。とはいえ再演の座組みもよかった。バランスがいい。松井周がなんか不思議なエロさがあってよかった。

新国立劇場『リチャード三世』観劇。2009年に新国立で上演された『ヘンリー六世』三部作とスタッフ・キャストがほぼ同じ顔ぶれの続編。『ヘンリー六世』が好評だったからこその企画だろう。実際私も『ヘンリー六世』を観た後、岡本健一のリチャードで『リチャード三世』を観たくてたまらくなったのだった。で、今日の『リチャード三世』、役者はよかったが、初日ゆえか演出の問題か、テンポが悪くメリハリがない。ひとつひとつのシーンがすごく長く感じた。岡本健一は『ヘンリー六世』に引き続きリチャードを好演。しかし、『ヘンリー六世』のときに感じたぐっとくる色気がなかったように思う。『ヘンリー六世』では薔薇戦争のために戦ったリチャードが、『リチャード三世』では己の野望のために戦うから、だろうか。『ヘンリー六世』でのものすごい悪女ぶりが印象に残った中嶋朋子が、引き続きマーガレット役。あの悪い美女が、呪詛ばかり投げつける白髪の老婆になっていたが、迫力は相変わらず。一番すごかったのは、リッチモンド伯役の浦井健治。彼は『ヘンリー六世』でタイトルロールを演じている。『ヘンリー六世』では思いを果たせずリチャードに殺されてしまったが、今回、ヘンリー六世の思いを代わりに果たしたような。改めてこれが『ヘンリー六世』の完結編なんだと。私は『リチャード三世』は、途中まではそんなに面白くなくて、後半リッチモンド伯との戦いになって、リチャードのもとに亡霊たちが現れて「絶望して死ね!」と呪われ、リチャードが破れて死ぬ・・・というラストの流れが好きなんだよね。特にラストのリチャードの「馬をくれ!」っていう台詞は最高。そういう意味では今回のラストの演出は非常に好みだった。

パルコ・プロデュース『ヒッキー・ソトニデテミターノ』観劇。岩井秀人さんが取材を重ねて書いた脚本だけあって、現実的でシビアな内容だった。笑いの要素は少なめ。ラストが衝撃的で観劇後にいろいろ考えさせられる。役者も皆よかった。

『K.ファウスト』観劇。前半はいまいちと思ったが、後半ラストにかけてが面白い。サーカスアーティストも出ており、サーカスシーンが見応えごあった。

スタジオライフ『ファントム』観劇。闇に生きるエリックが本当に人を愛したとき、その愛が暴走し、歪んだ方向に行ってしまう。愛するクリスティーヌにひどいことを言ったり、残酷なことをしてクリスティーヌを困らせる。でもそんなエリックを受け止めるクリスティーヌが天使に見えた。私は笠原浩夫さんのファンなのだが、ずっと仮面をかぶってる役で顔を見れなかったこと以外はとてもよかった。台詞の量もすごい。カーテンコールで仮面をとってお辞儀していたのがとてもやかった。マット・キンリーによる映像・美術が素晴らしい。エリックの住処のあるオペラ座の地下に移動するときに、映像がそれに合わせてどんどん変わっていくのがかっこよかった。

乞局『傘月』観劇。非常に面白かった!震災後の日本を、綺麗事じゃなく描いた力作。複数のエピソードが少しずつ繋がりを持ち大きなテーマにぶちあたる。見事な作劇。最後まで見応えがあって飽きない。シリアスなのに笑ってしまうシーンも多い。ボランティアのシーンは、人間は人間なんだなあと思わせる。

ブス会『女のみち2012』観劇。すごく面白かった!すごく笑ったし泣いた。女たちはどの人もものすごく真剣。なのにやってることはとてつもなく滑稽。女たちの業と情けに震えた。子供を生むこととか、いろいろ考えさせられる。女優がみんな体当たりの演技で、素晴らしい。

唐組『虹屋敷』観てきたけど、唐さん出てなかったよー。。。入院中だという・・・心配だ。唐さんが出ていない唐組なんて初めてだよ。寂しかったよ。。。今回の『虹屋敷』は、久保井研さんが唐さんの言う通りに演出したんだとか。久保井さんがやった役を初演で唐さんがやってたのかな?と思う。なんか唐さんが万一いなくなったら唐組はいったいどうなってしまうんだろうとか不吉なことを考えちゃった。。唐さんがいないというだけでこんなに精彩を欠くとは。

シベリア少女鉄道スピリッツ『ステップアップ』観劇。前半まったりしてるのはいつも通りかな?後半の展開もややまったりしていたが、バカバカしさは健在であった。

KENTARO!!『雨が降ると晴れる.2』を観た。面白かった。気を抜いてないけど気が抜けてるように見えるダンスで、リラックスして楽しめた。ダブルコール後のラストダンスがめっちゃパワフルで一番好きだったな。個人的にはパワフルなダンスのほうが好き。

『たった一人の中庭』鑑賞。なんだこれ、すごく面白い!にしすがも創造舎全部を使ったビッグプロジェクト。ビッグアート。アートだ!って叫び出したくなる!いろんな部屋があって、歩きながら様々なものに出会っていく。どんな見方をしても自由だし、いたいだけいていい。なんかすごく演劇的だと思った。想像してたより複雑なインスタレーション。複雑といってもわかりにくいということではない。ただテーマは難しい。でも、テーマがどうとかいうよりも、ただそこに行って観て体験するだけで貴重。そういうインスタレーション。いろんな部屋があってどれも興味深いが、私はお風呂の部屋が好きだった。しかしあれだけの作品をにしすがも創造舎に持ってきたのはすごいなあ・・・。とにかく『たった一人の中庭』は楽しめたし、あれを6時間もずっとやっているというのはすごいと思う。相当お金もかかっていそう。そういう金のかかった手の込んだアートを観るというのは、人間にはときには必要だ。

10月の観劇本数は12本。
ベストワンはブス会*『女のみち2012』。