8月に観た舞台

KAATキッズ・プログラム2012『暗いところからやってくる』観劇。イキウメの前川さんが、子供向けに書いたちょっと怖くて不思議な話。子供たちがたくさん笑っていた。大人が観ても楽しめる。ただ、わかりやすい分普段のイキウメのような深さはない。

オイスターズ『トラックメロウ』観劇。独特の会話劇。ストーリーがあるようなないような感じで、笑い多め。不条理劇というかファンタジー?個人的にはストーリーに絡まない笑いは得意ではないので、あまり好きなタイプの芝居ではなかった。でも客席はウケていましたよ。

劇団あおきりみかん『ここまでがユートピア』観劇。良くも悪くもオーソドックスな芝居。斬新な手法があるわけでもなくただただ物語やテーマを伝える。だが最後まで飽きさせずに見せる力はある。途中まではまったりした展開だなーと思ったが、途中からの展開が面白かった。役者も体を張っていてよかった。

ロロ『父母姉僕弟君』観劇。擬似家族を描きながら最後はしっかりボーイ・ミーツ・ガールになっていた。ストーリーがきちんとある芝居じゃないからか、最初はとりとめがない感じがしたが、篠崎大悟君が突っ込むシーンから面白くなってきた。ラストの演出好き。亀島一徳さんのラストのセリフがよかった。

月影番外地『くじけまみれ』観劇。面白かった。後半は唐組のよう。丸山厚人めちゃくちゃかっこいい!セリフが詩的で美しい。福原さんの書く言葉、好きだ。

ユニークポイント『THE TUNNEL』観劇。日本と韓国が一本のトンネルで結ばれることになった。トンネル開通に反対する人々、開通式で出し物をやることになった高校の演劇部、トンネルを掘っている韓国人と日本人など、様々な立場の人々が描かれるが、オーソドックスで捻りがなく、面白くない。

ブルーノプロデュース『ラクト』観劇。面白かった!いろんな意味でドキュメンタリーな演劇。女の子三人のゆるい会話で始まり、そこからあるシーンが芝居っぽく立ち上がっていくのを面白く観ていたら、次の瞬間にはすべてが壊され「嘘」になる。すべてが「嘘」になった後で繰り広げられる、弾けるような会話は、終わりかけの夏みたいに切ない。話が途切れたときの白けた感じもたっぷり味あわせつつ、三人がそれぞれのプロフィールを利用してポツポツと語り始める。役者として舞台に立っている以上、素ではないし、キャラクターを演じているはずなのだ。そこで語られることは「嘘」であるはずだ。だがその境界がわからないというか、もはやそんなことどうでもいいと思えるくらい、舞台の三人が魅力的だった。改めて「ドキュメンタリーってなんだろう」と思った。ドキュメンタリー演劇といってもいろいろあるけど、ブルーノプロデュースのやっていることは、一言で言えば好感が持てる。これからもドキュメンタリーシリーズは続いていくようなので、これからどんな変遷を遂げるのか見守りたいと思いました。

『ふくすけ』観劇。面白い。江本純子がいい味出してる。多部未華子はやはり舞台映えする。可愛い。フツーじゃない人ばかり出てくる壮絶な芝居。躁鬱病のマスのエピソードが衝撃的。松尾さんの芝居にはよく精神を病んだ人が出てくるが、すごく切実だ。精神を病んだ人がパワフルに「生きる」とはどういうことか。実はラストを観るまで、この芝居をどう捉えればいいのかはっきりわからなかった。重すぎるとも思った。でもラストの古田新太さんにすべて持っていかれた。ものすごく衝撃的で、ものすごく爽快なラストシーンだ。

チェルフィッチュ『女優の魂』観劇。佐々木幸子による一人芝居。彼女が「やりたい」と強く言って実現した企画だけに、すごく力が入っていたし、彼女の女優としての覚悟みたいなものも感じられてよかった。話の内容も、短いながらなかなか面白かった。佐々木幸子の表現力がすごい。

少年王者舘『累─かさね─』観劇。客演のヨーロッパ企画の中川晴樹さんがいい味を出していた。少年王者舘の世界に知らずに紛れこんでしまった感がよく出ていた。そこは夢のような世界で、死の匂いに満ちている。落語『真景累ヶ淵』が下敷きになっていると思われる。殺伐としたなかの夕沈ダンスがいい。

『鎌塚氏、すくい上げる』観劇。面白かった!お坊ちゃまの見合い相手のお嬢様がとんでもないじゃじゃ馬。挙げ句の果てには見合いを嫌がって女中と役を交換してしまう。そんなこんなで起こるトラブルに真摯に挑む我らが鎌塚氏、素敵すぎる。満島ひかりを舞台で初めて観た。顔が小さく可愛い。そんな容姿と裏腹のじゃじゃ馬お嬢様の役、とてもよかった。ちょっと声張りすぎかなと思ったけど、あの歌にはやられます。女中役の市川実和子もよかった。控え目な存在感。

KAATキッズ・プログラム『ゲーム』観劇。小野寺修三らしい、遊び心のあるアイデアが次々出てくるシーンの連続を楽しむ。マイムならではの洗練された身体の動きが面白い。印象に残ったシーンがいろいろあった。だがストーリー性がないせいか途中退屈に感じることも。

コンドルズ『ノッキン オン ヘヴンズ ドア』観劇。いつも通り面白かった。慣れてきたせいかギャグは前ほど笑えなくなってきたけども。あといつまで経っても新しいメンバーの顔と名前が覚えらんない。人数が多い。大人数でのダンスもいいが、藤田くんや近藤さんのキレのあるダンスをもっと観たい。

『トロイラスとクレシダ』観劇。話は結構突っ込み所満載だけど、オールメールでイケメンたちが頑張っていて好感が持てた。特にディオメデス役の塩谷瞬が、なんというかオスの匂いを感じさせ、ドキッとする。すごくかっこいい!離れ離れになったらクレシダはあっさりトロイラスを裏切ってディオメデスに心変わりするし、トロイラスはトロイラスでディオメデスを倒そうという個人的な気持ちで戦争に行くし…なんかみんなどこか身勝手。

東京デスロック『リハビリテーション』観劇。「東京」という土地と、そこに生きる若者たちの未来を描いたもの。50の質問のうち、前半はほとんどあてはまってしまった自分にやれやれという気持ち。「眠れない日が多い」とか「やる気が出ない」とか、私のことを言われている、と思ってしまった。

『三宅島在住アトレウス家』《山手篇》行って来た。すごく面白かった!場所がわからないとかいろいろハードル高かったけど、思い切って行ってよかった。掘り出し物だこれは!旧平櫛田中邸にて、ゆっくりとすぎていく夏の夜。団扇と麦茶とオレオ。窓からの風が気持ちいい。もうこれだけでいいという気分になった。時間を楽しむってこういうことかと。三宅島のことやギリシャ悲劇のことが語られるが、そこでなにが起きるかということはあまり重要ではない。大事なのは各人が自分なりの時間を楽しむことだ。三宅島と山手線の地図が面白い。三宅島と山手線、そしてギリシャ悲劇の三重構造になってるが、小難しいことはなにもない。三宅島行きたくなったが日程が合わず残念。でも今回じゃなくてもいつかは行く機会があるはず。東京から六時間かけて船で行くって、それだけで十分面白い。

手塚夏子『ただの「実験」がメディアになるのか?の実験』鑑賞。無料イベントなのに二時間半もあるよ(~_~;)前半は男性と女性のパフォーマーがそれぞれ「実験」をして、震災と原発事故のことを浮き彫りにする。女性の実験は興味深かったが、男性がやった子供を使った実験はグダグダでつまんなかった。後半も観て、これは実験でありパフォーマーのドキュメントでもあるのだと思った。いわき市在住の女性とデモに参加している男性。共感できた人は一緒になって太鼓を叩くし、違和感を覚えた人は帰っていく。反応がはっきりしている。その反応の違いが興味深い。だが最後に祈りについて延々やったのは蛇足。途中で人がばんばん帰っていくのが面白かった。美術館で絵を見るみたいに、ある一定の時間だけ作品と対峙し、そこを去る時間は自分が決める。そんな空間。いわゆる「演劇」では全然なくて、たまたまそこに居合わせた、という感じでフラットに見ることができる空間だからこそ、途中で帰ることも自由にできる。というより、「途中で帰る」ということは「実験に違和感を覚えた」ということだともいえるわけで、それも含めての「実験」だったのだと思う。

8月の観劇本数は17本。
ベストワンは『ふくすけ』。