6月に観た舞台

マームと誰かさん・ふたりめ『飴屋法水さん(演出家)とジプシー』観劇。青柳いづみも飴屋法水もすごい!痛みがダイレクトに伝わってきて、ぎしぎし痛くて切なくて哀しくて、だけど見上げた空は儚く美しかった。私はやっぱりこういう演劇を観たいんだ。空間作りも装置(?)も素晴らしかった。

三条会ひかりごけ』観劇。演出も役者も一新され、全くの別物になっててびっくり。関さんのこの思い切り、アクティブな感じが実にいい!教室はなくなり、前半はシンプルに、後半は鮮やかなセットが天井から降りてきた!かっこいい!そして、やはり榊原さんが登場した瞬間、舞台が引き締まる。

青年団『月の岬』観劇。思ったよりドロドロした話で面白かった。人間関係の捩れが興味深い。人間ってめんどくせーなーと思う。結婚したりとか恋愛したりとか子供作ったりとか、なんのためにそんなことするのかと思うね。そこに人間の本能があるからなんだろうけど。でもめんどくせーなー。台詞だけで「月の岬」のことを描いている場面が美しかった。その情景がありありと想像できた。役者では不安定な妻を演じた井上三奈子がよかった。彼女が夜中、縁側に出てきて水を飲みながら台詞を言うシーンは幻想的で、謎めいて、ドラマティック。そういうミステリアスさもよかった。

五反田団宮本武蔵』観劇。面白かった。「拙者」とか「ござる」とかの時代劇の台詞と現代口語をミックスさせた言語感覚が絶妙で、台詞聞いてるだけで笑えてくる。全然強くなさそうな宮本武蔵役を無精髭を生やした前田司郎が飄々と演じている。胡散臭いのに変に用心深かったりという人間性が面白い。

スタジオライフ『天守物語』Qチーム観劇。うーん、芝居というよりショーという感覚で観れば面白いのかな?歌ありアクションありだし。宇野亜喜良の美術と衣裳がよかった。泉鏡花のイメージに合っていた。スタジオライフが泉鏡花作品に挑戦したというのは意義があることだけど、なぜかあまり新鮮味を感じなかった。キャストも想定内な感じ。唯一青木隆敏くんはいつもと違う役でインパクトあったけど、私は彼のファンなので、できればもっとかっこいい役で観たかったな〜。やっぱり上演台本がよくない気がする。なんか前半だれてるし、肝心の恋愛の話が後半にしかでてこないし。登場人物に共感もできなかったなー。登場人物が多すぎて、前半はその紹介みたいな感じになってしまっていた。後半だけで物語を作っているから、弱い。説得力がない。オイケンの富姫も想定内な感じだったなー。可愛かったけれども。岩崎大くんだとだいぶ変わるんだろうな。あとせっきーの亀姫がすごく可愛かった!衣裳がものすごく可愛い。アラケンは・・・後半にしか出てこないのがもったいない。曽世さんと林さんの絡みが面白かった。この2人は最強。でも『天守物語』は、劇団員の男の子たちが綺麗な格好して目一杯楽しみながら泉鏡花をやってるというのが伝わってきてこちらも観ていて楽しくなったし、ミュージカル風に歌を歌ったり殺陣があったりと、見どころはいろいろあると思う。私も久しぶりに楽しい芝居を観て、いい気分転換になった。

マームとジプシー『ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景』観劇。面白かった。事故によりこれまでの日常生活が泡に消えてしまった人々。彼らのそれまでの日常を丹念に描く。切ない話。だけど役者たちは皆汗だくになって走り回っている。この瞬間こそが永遠だといわんばかりに。

ハロルド・ピンター作『温室』観劇。不条理劇で細部を読みとらねばならない芝居だと思うが、ぼんやり観ていたせいか話がさっぱり頭に入ってこずひたすら退屈だった。役者は皆うまかったが。

康本雅子『絶交わる子、ポンッ』観劇。すごく面白かった!とにかく自由な感じがたまらなくいい!様々なタイプのダンサーたちによるダンスはデコボコ感があり面白い。ラストは爽快。ポンッ!テーマは交わり。「官能」を描いている。強い拒絶も官能である。人と人が交わろうとするときの、ヒリヒリするような痛みに触れ、涙が出そうになった。違う、違う、違う、という叫びが心に響く。ダンサーのなかでは、一番髪の長い女性ダンサーがとりわけ目を引いた。豊満な肢体、サラサラと流れる髪の毛、そしてキレのあるダンス。かっこよかった。彼女が下着姿で踊るシーンは見入ってしまった。ダンスって頭空っぽにして観られるのがいいね。やっぱり康本雅子好きだなあ。遊び心があるし、それでいてシリアスな問題についても触れている。これは彼女自身の普段の生活から思ったことなんだろうなあと思う。ラストの台詞はかっこいいし、「そうだよね!」と思える前向きさがいい。

劇団子供鉅人『バーニングスキン』観劇。ナンセンスでシュールで過剰な劇。パワフルさは感じたけど面白くはなかった。燃える皮膚を持つ女の物語という大筋はあるが、ストーリーがあまりなく、荒唐無稽なシーンが延々続く。そういうのを楽しめる人向けで、結構好き嫌いが分かれる感じ。自分はダメだった。客席は受けてる人が多く、好意的に受け入れられてる感じがした。確かに若い人たちが体張って頑張ってる感じは好感が持てるし、いくつかのシーンは面白かった。とりわけボーダービキニ女のシーンは素晴らしかった。あと舞台装置と照明がかっこよかった。主人公の女の鬱屈をもっと観たかった。男性が脚本を書いてるせいか、わりとあっさりしてる気がした。その女の長セリフが多いのだが、脚本の問題か役者の問題か、言葉が印象に残らない。もっとかっこいいセリフをかっこよく吐いてほしいと思った。子供鉅人は初見の劇団だった。初見だと、どう受け止めていいのかわからない、という感じがあったと思う。面白いとは思えないが、周りはみんな笑ってる・・・自分の感性がズレてるんじゃないか?みたいなことも感じた。けど途中で帰ってたお客さんもいて、やっぱり感じ方は人それぞれだよねと思った。子供鉅人は、何度か観ている人が観ると「今回はこうきたか!」みたいな楽しみ方ができるのかもしれない。

6月の観劇本数は9本。
ベストワンはマームと誰かさん・ふたりめ『飴屋法水さん(演出家)とジプシー』。