GW旅行・1

ゴールデンウィークに、一人旅に出た。
一人旅をするなんて、7年前にウィーンに行ったとき以来だ。
私はかなりの面倒くさがりやだから、普通の精神状態だったら一人旅なんてわざわざしようとは思わなかっただろう。少し躁になっていたのかもしれない。
お金もなければ一緒に行く人も見つからない。それなのに、どうしても旅行に行きたくてしょうがなかった。どうしようもない衝動にかられ、こうなったら一人でかねての憧れの地である鳥取と島根に行こう、と決心した。
そして、そこまで行くのなら、高知まで足を伸ばして癌で療養中の友人に会いに行こうか、と思った。
私は思いついたら行動するのは早い。思いついた次の瞬間には、高知の友人に電話をしてゴールデンウィークの予定を聞いていた。
友人は特に予定はなかったようで、私が高知へ行こうと思っていると告げるとたいそう喜び、高知をいろいろ案内してあげる、と言う。そこで、せっかくなのでまず高知に二泊して友人の案内であちこち周り、その後一人で行く島根と鳥取はそれぞれ一泊することにした。
そうと決めたら、すぐにネットで高知までの格安航空券を購入した。正規で買ったら3万円もするチケットが、18,870円で買えた。まあ、それでも高いけれど。
高知の宿は、友人の知り合いがやっている宿をとってくれるというので、心配はいらなかったが、島根と鳥取の宿はとらなければならない。
島根は玉造温泉が有名なので、そこに泊まりたかったのだが、どこの宿も一杯だった。仕方なく普通のビジネスホテルを予約した。
その分、鳥取では奮発して温泉宿に泊まろうと思った。ガイドブックにも出ていた、湖の上にある露天風呂のある宿が、おひとり様用プランというのをやっていたので、それを予約した。
そして、高知から島根まで行く特急と、鳥取から東京まで帰る特急と新幹線をネットで予約すると、旅の準備は完了した。
あとはガイドブックを見ながら、大体の旅行のプランを立てた。

そして5月2日、とうとう羽田から高知へ発った。
高知空港へは15時40分に着いた。空港へは、友人と友人の世話をしている女性が迎えに来てくれた。
女性の車でホテルへ行き、チェックインして荷物を置いた後、さっそく出かけた。
私のリクエストでひろめ市場へ。
ひろめ市場は、約60店舗が軒を連ねる屋内マーケット。カツオやクジラを使った高知の味が楽しめる飲食店や特産品を扱う店が集合している。中には席があり、座る場所を決めてから、いろんなお店で直接食べ物や飲み物を頼む。そのシステムはなんかマレーシアあたりの屋台村みたいな雰囲気。ひろめ市場の雰囲気もいい。昼間からおいしい魚をつまみに飲んでるような人で賑わっていた。
私はかつおのタタキと鯛汁を頼んだのだが、かつおのタタキが絶品だった!さすが本場の味。東京では食べたことのない味だった。
ところが、友人は、高知出身でありながら、魚介類は一切ダメという変わった人。彼はせっかくのひろめ市場で焼きそばを頼んでいた・・・。
その後、友人が予約してくれていたフレンチの店へ。高知まで来てなんでフレンチなんだ、という気もしないでもなかったが、友人はとにかくフレンチやイタリアンのお店が好きなのだ。
彼が連れて行ってくれたお店は、シックなピンクと白色の内装で、シャンデリアが煌々と輝いていた。そんなところでフレンチのコースを食べているとまるでお姫様気分になった。
高知の人間はフレンチなどはあまり食べないのか、ゴールデンウィークだというのに、客は私たちだけだった。
互いの近況や彼の病気の話、映画の話などをしながら、コース料理を食べ、赤ワインを飲んだ。といっても、彼は病気のためお酒が飲めないので、ほとんど私一人で赤ワインのボトルを飲んでいた。
友人は癌といっても薬で抑えられる程度になったみたいで、かなり元気そうに見えたので、ホッとした。
一時は手術したりでかなり悪化していたようだが、あれからかなり病状は持ち直したらしい。
ワインのボトルはさすがに余ったので、ホテルへ持ち帰った。
ホテルへ着いたのは22時頃。シャワーに入り、ゆっくりワインを飲みながら、日記を書いた。
東京を離れ、一人で高知のホテルに泊まっている。そんな非日常を楽しんだ。
高知の夜が更けて行く・・・旅行はまだ始まったばかりだ。