1月に観た舞台

ガレキの太鼓『吐くほどに眠る』観劇。面白かった。話が私好みだし、演出も工夫されている。最初のほうは柴幸男の『あゆみ』を想起させる。終演後によく考えると、ストーリーは納得がいかない点もあるが、井上三奈子の演技力というか憑依力のおかげで、観ている間は力づくで納得させられてしまう。

五反田団『びんぼう君』観劇。面白かった。三人の役者たちのなりふり構わぬごっこ遊びには笑った。芝居の後の餅つき大会も面白かった。きなこ餅をいただいたが、つきたてで柔らかくておいしかった。なんかホッコリするな〜。

唐十郎作、蜷川幸雄演出『下谷万年町物語』観劇。長くてわかりづらい話だったが、本水を使った演出や舞台装置が豪華で見応えがあった。でもそんな豪華さよりなにより、役者たちの熱演に拍手したい。特に宮沢りえは素晴らしい。女優としての彼女の魅力を堪能。宮沢りえの最初の登場シーンが派手でいい。タンゴを踊るのも素敵。ラスト近くの真っ赤なドレス姿で太ももを出してるのもよかった。あと『ヒミズ』にも少し出ていた西島隆弘が意外によかった。六平直政は登場するだけで迫力。唐十郎が出る回に観たらかなり面白いだろうな。まあでも、当たり前のことかもしれないけど、唐さんの芝居は唐組で観るのが一番だ。臨場感とか半端ないし。最後の屋台崩しとか。唐組を観たことがなくてコクーンの『下谷万年町物語』観て、「唐十郎の芝居はわからない、苦手」とか思う人も多いだろう。それはほんとにもったいないことだ。ほんと、みんな、だまされたと思って、唐組を一度観に行けばいいと思うよ。まあテントでござに座って観る、って時点でダメな人はダメなんだろうけど・・・。でも芝居の醍醐味ってそういうところだと思うんだけどなあ。でも「劇場で観る芝居が好き」という人も多いから、好みの問題かな。唐組はとにかく「役者を観る」という感じだね。その場で起きていることを単純に楽しむというか、臨場感を楽しむという感じ。唐さんが登場するときの掛け声とか拍手とかも面白いし。まあ、唐さんの芝居は、きちんとストーリーを追うとか無理だし(汗)。そういう意味では、今日の『下谷万年町物語』も、まさに「役者を観た」という感じだったな。オカマ役の人たちも、一人一人個性があった。女装してたから誰が誰かよくわからなかったけど・・・。カーテンコールでコクーン中がアンコールの拍手に包まれたのが素敵だった。温かかった。隣の人とかは「全然わからない。もうストーリー追うのやめた」とか休憩中に言ってたな。そうだよね・・・。私も唐さんの芝居はストーリーは追わない。なんていうか追ってたらついていけないし。でもストーリーわからなくても面白い芝居、ってあるんだよ。今日のはすごく面白かったわけじゃないけど・・・。なにが言いたいのか自分でもよくわからなくなってきた。今日の芝居は唐さんの脚本にしては豪華すぎる芝居だったし話もわかりづらかったけど、つまらなくはなかったし唐さん好きだ。唐さんの出る回に観たかったな。なんといっても役者としての唐さんが一番魅力的だものね。

ジエン社『アドバタイズドタイラント』観劇。ここまで震災のことをストレートに描いてる作品て見てなかったかも。同時多発会話でシーンを作り出すのが相変わらず巧み。

Q『プール』観劇。すごくよかった。こういうの好み。詩的な台詞に引き込まれる。女の子の生々しくも切ない感じがキュンとくる。男の子もよかったな。役者全員よかった。吉田聡子いい。アトリエセンティオは初めて行ったが、素敵な空間。生理的なあれこれを描いているのに、泥臭い感じがしなくてうっすらオシャレに思えるのは、見せ方、パッケージの仕方がうまいからなんだろう。女の人の生理的な台詞も、男の人の潔癖な台詞もよかった。ストーリーがあるようなないような、感覚で作られたような不思議な芝居。アトリエセンティオは、靴を脱いで上がるのもよかったし、白壁なのもよかったし、舞台との距離が近いのもよかった。美術や照明がさりげなくも凝っていて、テンションが静かに上がった。しかし、初めて観る劇団で、初めて行く劇場・・・というのは、かなりハードルが高かった。しかも週末、仕事でくたくたに疲れきっているし、雪で寒いし・・・。板橋で降りるのも初めてだった。チラシの地図がわかりづらく、というか合ってなくて、何度も駅に引き返した。寒空の下、降りたことのない駅で、行ったことのない劇場に行くためにチラシを手に右往左往していると、自分はこんなところでなにをしているんだろう・・・と思った。チラシに「駐輪場」とあるところに駐輪場はなくてスーパーマルエツがあった。駐輪場を探してウロウロしてしまったよ・・・。まあ、劇場にたどり着くまでのあれこれも含めて、実は結構楽しんでいるんだけどね。そしてたどり着いた劇場が素敵な空間で、芝居も面白かったのだから、なにも言うことはない。

世田谷シルク『渡り鳥の信号待ち』観劇。久々につまらなかった・・・。大勢でのダンスとか、皆で台詞を唱えるシーンとか、印象的なシーンはいくつかあったが、全体的にはピンとこず、途中で飽きてしまった。時間が長く感じた・・・。

ハイバイ『ある女』観劇。めちゃめちゃ面白かった!やっぱり岩井さんはすごい。登場人物や設定がいちいちツッコミどころ満載でおかしいのなんの。でも笑ったあとで、ヒロインタカコの泣き笑いの人生に共感して泣きたくなったりして、もうわけがわからないよ!『ある女』というタイトルが非常にいい。タカコの人生はおかしく悲惨だけどとても愛おしい。岩井さん得意の見立ての演出もとてもいい。ああ、演劇って面白いなあと、心底思う。岩井作品にしては珍しく映像が多いのだが、それが意外にもピタッと来る。ナレーションもいい。映像で語られる、タカコの過去の恋愛話とか、興味深い。でもそれ以上に、彼女がなんの変哲もない日常を淡々と送っている様が描かれているのが、なんか親近感というか、興味深かった。不倫ってタブーなんだよな、なんてことを改めて思ったりも(笑)。なんか自分がそういう普通さとか常識とかからかけ離れた「自分なりの道徳」みたいなものを持ち始めている気がしている今日この頃。きっとみんな、『ある女』を観ると身につまされる部分がいくつかはあるだろう。過去を思い出したり、切なくなったり、辛くなったり。でも笑えたりホッコリする部分も多い。やっぱりヒロインを男性が演じているのが大きいのだろう。これがかなり演劇的な効果を上げている。女性がやったら生々しすぎる。『ある女』は、岩井さんの回が完売で菅原さんの回を観たけど、菅原さん、すごくよかったよ!しかし「役者岩井」の人気ってやっぱり絶大なのね・・・。

谷賢一作・演出『ヌード・マウス』観劇。すごく面白かった。上質なストレートプレイ。脳に関する様々な話は、刺激的で新鮮。事故で脳を損傷した娘と脳科学者の父、娘の夫と弟が登場する。壊れてゆく娘を守ろうとする父。守りきれない夫…。様々な人の思いが交錯し、深い余韻を残す。昨日のプレビュー公演は、ツイッター上では「難しい、わからない」みたいな書き込みもあった。けど、今日の初日を観る限りでは、全然難しくもわからなくもない。時系列じゃないし、台詞の内容とかは専門的なものもあるけど、根本的には家族とか愛とか普遍的なことを描いている。それにしても、ツイッター上では賛否分かれてるな〜(汗)。私は面白かったし、たぶん個人的にこういう話が好きなんだろうな。いずれにせよ、こういう戯曲を書いた谷さんはすごいと思う。あと役者4人はとてもよかった。なかでも脳科学者役の山本亨さんははまっていた。かっこよく素敵だった。

シベリア少女鉄道スピリッツ『太陽は僕の敵』観劇。うーんいまいち。前半長すぎるしそこでの話が全然面白くない。後半の装置は広い舞台を効果的に使ってはいたけど、インパクトはあまりなく。意外性もあまりなかった。

東憲司演出『トンマッコルへようこそ』観劇。激化する韓国の戦争。しかし、トンマッコルという山のなかの奥地にある村では、人々は戦争を知らず、和気あいあいと日々を送っていた。そこを軍人が訪れ・・・。あまり好みの話ではなかったけど、よくできていた。桟敷童子の役者たちの熱演ぶりがいい。

てがみ座『乱歩の恋文』観劇。長すぎる上話が面白くなく、引き込まれない。印象的なシーンもあったが、冗長なシーンが多すぎる。最後のほうは早く終わってくれないかなと思ってしまった。演出と美術はいい。役者では乱歩役の桟敷童子の人が光っていた。乱歩の苦悩をよく表現していた。

鵺的『カップルズ』観劇。セックスにまつわるあれこれを描いている。ストーリー展開が面白く、最後まで見せる。最後のオチは個人的にはいろいろ思うところはあるけど、なんの救いも結論も出ない感じがよかった。


1月の観劇本数は12本。
ベストワンはハイバイ『ある女』。