ミクニヤナイハラプロジェクト『前向き!タイモン』

ミクニヤナイハラプロジェクト『前向き!タイモン』

作・演出・振付◇矢内原美邦 出演◇笠木泉 鈴木将一朗 山本圭
9/1〜4◎こまばアゴラ劇場

<作品概要>(公式サイトより)
ニブロール主宰・振付家矢内原美邦による演劇プロジェクト「ミクニヤナイハラプロジェクト」の最新作!
シェイクスピアの「アテネのタイモン」を下敷きに、どれほど辛く厳しい人生でも前向きに生きる現代版タイモンを描きます。昨年12月に行われた「シェイクスピア・コンペ」にて優秀賞を受賞した作品に出演者を2名加え、さらにパワーアップした本作に是非ご注目ください!
──
言葉、言葉、言葉の洪水。
早口でまくしたてられる大量の台詞に、ただただ圧倒させられる。
台詞の内容に意味があるというよりは、こうして早口でまくしたてられる演出に意味があるのだと思う。
ひっきりなしにしゃべりまくる俳優は、当然ながら疲弊していく。その俳優のエネルギーがとにかくすごい。
矢内原さんはダンス作品も多数演出しているけれど、この作品ではもしかしたら「言葉」がダンス的な要素を持つのかな・・・と思った。
後半、3人がそれぞれ独白をするシーンがある。そこが面白かった。
メイドは自分が長女だということを延々と語る。
タイモンは自分の祖父がひよこの鑑別で儲けた話をする。
もう一人の男はひたすらりんごの話をする。
その話の内容にどんな意味があるのかということではなく、とにかくそれをライブで聴く、それを語っている俳優の身体を観る、そのこと自体に意義がある。
作者がこの作品を通して言いたいこともなんとなくわかったような気がした。
けれど、「わかった気がした」ことと「わかった」ことはイコールではないし、観ていて面白かったかと言われれば、決してそうではなく・・・。
なんだろう、とても刺激的な作品だったと思うのだけど、観ていて心を揺さぶられるということがなかった。
俳優を疲弊させる演出、というと、東京デスロックが真っ先に思い出されるが、デスロックほど「俳優を観ているだけで感動した」ということもない。もちろん、俳優は頑張っていたし、圧倒されはしたけれど。
恐らく、台詞の受け取り方次第なのだ、と思う。台詞の内容がもっとわかりやすいものだったら、台詞をきちんと理解して「物語」として観ることができただろう。あるいは、台詞がまったくないデスロックのような作品だったら、逆に俳優の身体のみを観ることができただろう。それはそれで「わかりやすい」ことではある。
この作品はそのどちらでもない。だから、どう受け止めていいのかわからず、ただ「観る」ことしかできず、それでもあまり「面白い」とは思えず。でも一般的には評価されているようだし、面白いと思って観た人のほうが多かったようだ。
このもやもやした感じは、自分に合わないダンス作品(でも一般的な評価は高いやつ)を観た後の感じに似ている。作品的には悪くないんだろうけれど、自分的には面白くなかったという。
批評的な文脈で作品を語ることは好きではないので、ただ「好みじゃなかった」とだけ書いておくことにする。