9月前半の気になる舞台・1

9月前半の舞台で気になるものを、初日の早い順に。

財団、江本純子 vol.5『日本全国奇形鍋』
9/1〜4◎SPACE雑遊
作・演出◇江本純子 出演◇亜矢乃 石澤彩美 内山樹里 遠藤隆太 大石綾子 小野正彦 川上ルイベ 北川義彦 熊谷美香 小沼早苗 佐藤祐香 澁谷佳世 高山のえみ 長菜々美 中村倫子 橋本美和 藤井咲有里 藤崎ルキノ 星奈美 本間玲音 宮本敏和 山口明希子 山並洋貴 吉川麻美 吉武遥
http://www.kegawazoku.com/

<作品概要>(チラシ、公式サイトより)
財団、江本純子(旧:劇団、江本純子)の2011年新作です。
福岡からスタートしたご当地演劇『奇形鍋』の東京版、
その名も『日本全国奇形鍋』!!
東京に集ってしまった精神的奇形の大人達が、
この貧乏都市の片隅で生きていくこと。
東京で生きててよかった?
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「劇団、江本純子」は、毛皮族でやっているような派手な娯楽的な公演とは一味違う、きちんとした戯曲で真面目に演劇をやろうと2009年に江本さんがひとりで始めたユニット。俳優は公演ごとに集め、江本さんが思い立ったときに、基本的には小さな小屋でやる、という、自由なスタイル。vol.1〜3までは渋谷のギャラリー・ルデコで、前回公演は東京芸術劇場で上演された。第二回公演『セクシードラバー』が岸田戯曲賞の最終候補になるなど、毎回、江本さんによる戯曲がとにかくすごく面白い。ごく普通の戯曲ではなくて、江本さんならではのもの。ストーリーはあるけれど、途中であらぬ方向へ行ったまま戻ってこなくなったり、かと思えば唐突に戻ってきたり、ナンセンスな場面が突然現れたり。言葉のチョイスが尋常じゃないぐらい面白く、さらにある台詞に対して登場人物がどんどん突っ込んでいって深みにはまって本筋とは関係ないところにいったり・・・というのがものすごいスピードで繰り広げられるから、一瞬たりとも飽きさせない。江本さんはとにかく書くのが早いらしく、戯曲も勢いに任せて書くことも多いようだ。だからこその面白さなのかもしれない。
最初はこじんまりとやっていた劇団、江本純子も、回を追うごとに規模が大きくなってきたようで、今回から「財団、江本純子」と改名。本作『日本全国奇形鍋』は、福岡からスタートしたご当地演劇『奇形鍋』の東京版。今までに比べ、出演者がものすごく多い。いったい江本さんの脚本はどんななのか、大人数の出演者は江本さんの脚本をどう体現するのか・・・。闇鍋みたいになにが出るのかわからない。これはぜひ劇場で体験したい。



鉄割アルバトロスケット『鉄割あっ!』
9/1〜4◎ザ・スズナリ
作◇戌井昭人 演出◇牛嶋みさを 出演◇戌井昭人 奥村勲 中島朋人 中島教知 村上陽一(the BackDrops) マークス雅楽子(Kiiiiiii) 向雲太郎(大駱駝艦) 南辻史人 松原東洋(トンデ空静)
http://www.tetsuwari.com/schedule/index

ひとつながりの芝居ではなく、芝居やコントや歌や踊りなどのパフォーマンスを何演目も矢継ぎ早に繫ぎ合わせて上演している鉄割アルバトロスケット。その内容はどこか見世物的で、とにかく呆気にとられるほどバカバカしくもおかしくてパワフル。役者のエネルギーが半端ないので、観ると元気になる。たとえば、買い物主婦の格好をしてひたすらネギで殴り合う男たちのパフォーマンスや、父親がホモで母親が万引き常習犯、娘は自殺常習犯、赤ん坊が超能力者というおかしな家族が歌合戦を繰り広げるパフォーマンスなど、とにかく下らないのだけど笑ってしまう演目ばかりで、全部観るとお腹いっぱいになります。空間の演出にもこだわり、スズナリが見世物小屋に早変わり。販売しているビールなどを飲みながら観られるのも良い。構えて観るものでは全然ないので、ビールをやりつつ気軽にゆる〜い気持ちで観たい公演。



ミクニヤナイハラプロジェクト『前向き!タイモン』
9/1〜4◎こまばアゴラ劇場
作・演出・振付◇矢内原美邦 出演◇笠木泉 鈴木将一朗 山本圭
http://precog-jp.net/ja/events/2011/09/mikuni-yanaihara-project-hey-timon-lets-think-positive

<作品概要>(公式サイトより)
ニブロール主宰・振付家矢内原美邦による演劇プロジェクト「ミクニヤナイハラプロジェクト」の最新作!
シェイクスピアの「アテネのタイモン」を下敷きに、どれほど辛く厳しい人生でも前向きに生きる現代版タイモンを描きます。昨年12月に行われた「シェイクスピア・コンペ」にて優秀賞を受賞した作品に出演者を2名加え、さらにパワーアップした本作に是非ご注目ください!
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ダンスのような演劇のような作品を発表しているミクニヤナイハラプロジェクト。私は『五人姉妹』『幸福オンザ道路』を観ているが、どちらもとても面白かったので、今回も面白くなるのでは。ちなみに『五人姉妹』はかなり演劇的な要素が強く、『幸福オンザ道路』はダンス的要素が強い印象でした。



TPT『大と小』
9/2〜11◎上野ストアハウス
作◇ボート・シュトラウス 訳◇黒田容子 演出◇手塚とおる 出演◇宮本裕子 秋定史枝 梅村綾子 大沼百合子 奥村知史 狩野淳 岸田研二 小寺悠介 篠山美咲 高畑こと美 武田優子 田中智也 中川香果 蓮見のりこ 宮本裕子 村上聡一 森ほさち
http://www.tpt.co.jp/aboutus/archive/079.html

<作品概要>(公式サイトより)
ホテルのダイニングルーム、窓のそとの男たちの声にひとり耳を傾ける女=ロッテ。モロッコからザールブリュッケン、エッセン、ズィルトへ……夫に拒まれ、友に忘れられ、家族とは疎遠、ロッテは世界になじめない。居場所を求め、つながりを求めて世界を駆け抜ける女の旅。
20世紀ドイツ演劇を代表し、ドイツ語圏で最も作品が多く上演されている劇作家、ボート・シュトラウス(1944-)の作品を、tpt43『時間ト部屋』(2003)以来8年ぶりに取り上げる。演劇雑誌テアター・ホイテの編集者、ベルリンの劇場シャウビューネのドラマトゥルクを経て、シュトラウスがペーター・シュタイン、リュック・ボンディらの演出により発表した作品群は、ドイツ演劇史において重要な位置を占めている。
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20世紀ドイツ演劇を代表するボート・シュトラウスの伝説的傑作だという。難解そうでもあるが、それも含めて面白そう。ナカフラの村上聡一さんが出演されるんですね。手塚とおるさんのTPTでの演出作品は『ミザントロオプ』を観ていますが、面白かったので、期待できるかと。


「9月前半の気になる舞台・2」に続きます〜。