ニッポンの河川『大きなものを破壊命令』

ニッポンの河川『大きなものを破壊命令』

脚本・演出◇福原充則(ピチチ5) 出演・音響・照明◇森谷ふみ 光瀬指絵 寺西麻利子(セキララ) 佐藤真弓(猫のホテル
8/10〜14◎こまばアゴラ劇場

出演者自らテープレコーダーを操作して音響を担当。照明も出演者たちがやる。コンパクトな空間のなかに、福原充則描く壮大な世界が繰り広げられる・・・。とにかく日常的な小さな空間に立ち上がる異次元、というのが大きな魅力のニッポンの河川。福原の脚本がまた面白いし、さらに役者が脚本を上回るほど面白い。役者が一人何役もやったりするし、時空間も簡単に超えちゃうし。ひとつの役から別の役へパッと切り替わる瞬間がすごい。その瞬間、観客も別次元へ連れて行かれる。
今回も公演もものすごく面白かった。なにより、1時間という短い上演時間のなかでの情報量が半端なくて、すげーな、と思った。複数のエピソードを同時に出して、複数の役をひとりの役者に演じさせることで、溢れるほどの情報量を半端ないスピード感をもって一時間という短い舞台で成立させている。福原さんの脚本と演出のすごさを改めて痛感した。
そして今回、役者たちがものすごく魅力的だった!役者がテレコを持ってテープをどんどん替え、足元にある照明スイッチを足で押しながら、スピーディーにどんどん役を変えながら演じる。しかも台詞が超かっこいい。台詞の流れとか見栄の切り方とか、音と照明の入り方とか、もう唐組かと思うほど。そんな役者の姿を見ているだけで感動してしまった。特に佐藤真弓さんはやはりすごい。こんな間近で真弓さんを見られる幸せ。少年役がここまではまり、台詞回しやちょっとした表情の変化がこんなに面白い女優さんってちょっといない。特に少年役から大和撫子な女性役に変わる瞬間が面白すぎ。
物語は、熊谷で起こっている“首絞めジャック”なる連続殺人犯を倒そうと目論む少年(佐藤真弓)が主人公。そこから戦場にいる4姉妹の話になり、4姉妹の過去の話になる。長女が敵軍に抱かれるために向かうと、なんと敵は鳩だった!鳩たちの発する「ぴじょーん」「ポッポッポ」という音と奇妙な動きが頭から離れない(笑)。長女は半分ロボットにされて姉妹のもとに戻るが・・・。
少年を主人公にした片田舎の話から、あり得ないようなぶっ飛んだ話になり、無限大にどんどん広がっていったかと思えば、また少年の話に戻る。
少年は15歳になったばかりの日、首絞めジャックを倒そうとして殺されてしまったのだ。
少年の話と4姉妹の話が交互に出てくるなかで、少年が殺されるシーンも何度か繰り返されるのだが、最後のほうのろうそくを使ったシーンのリリカルかつ静謐な美しさといったらなかった。