8月後半の気になる舞台・2

8月後半の気になる舞台、続きです。

DULL-COLORED POP第10回&活動再開記念公演
『Caesiumberry Jam』
8/20〜28◎池袋シアターグリーンBOX inbox
作・演出◇谷賢一(DULL-COLORED POP) 出演◇東谷英人 大原研二 塚越健一 中村梨那 堀奈津美 若林えり(以上、DULL-COLORED POP) 石丸さち子 井上裕朗 加藤素子 佐賀モトキ 芝原弘 田中のり子 細谷貴宏 百花亜希 守美樹 吉永輪太郎
http://www.dcpop.org/stage/index.html

<作品概要>(公式サイトより)
四谷にある雑々たる仕事部屋で、カメラマンは思い出していた。
十年前、あの渇いた大地、打ち捨てられた寒村、そこに住む人々との思い出。
一つ一つ、噛み含めるように、あの土地での記憶を掘り起こしていく。1991年、1993年、1994年、1995年、そして1986年。あの土地で何が起こったのか?
人類史に深く刻まれたあの大事故を、綿密な取材に基づきオリジナル・ストーリーとして著した初演版から約4年。劇団躍進の契機となった野心作を新アレンジで再録した待望の再演。劇団活動再開記念&第10回記念公演として、2011年の今、上演します。
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2009年秋に劇団活動を休止したDULL-COLORED POPが、約2年を経て活動再開へ。
作・演出の谷さんは、その間、様々な舞台の演出をされていました。特にシアタートラムで上演された『モリー・スウィーニー』は、鳥肌が出るほど素晴らしかった。劇団活動を休止している間、外部の活動で、いろいろなものを吸収しただろう谷さんのホームでの新しい挑戦、そして新しく生まれ変わったDULL-COLORED POPに期待が高まります。
谷さんといえば、8/16・17に、自らの結婚式を劇場で観客をも呼んで行ったようです。詳細はこちらのブログにあります。http://ameblo.jp/corichtezuka/entry-10989462582.html
結婚式をも「出し物」として「演出」する。それをお客さんに観てもらう──。谷さんの演出家魂はすごい。そもそもそういう発想自体がすごいと思うし、実際にやるとなったらいろいろ大変そうなのに、さらりとやってのけるところがまたすごい。それにその後すぐ公演があって、しかも結婚式をやったのと同じ劇場で(笑)。パワフルだな〜。



少年王者舘『超コンデンス』
8/25〜30◎下北沢ザ・スズナリ
作・演出◇天野天街 出演◇夕沈 白鴎文子 中村榮美子 黒宮万理 雪港 ひのみもく ☆之 水元汽色 小林夢二 宮璃アリ 水柊 池田遼 PECO 街乃珠衣 井村昂 織田圭祐(ニットキャップシアター)
http://www.oujakan.jp/super_condense.html

少年王者舘にしかない独特のマジックのような世界を堪能できる。ちょっとノスタルジックなストーリー。劇場いっぱいを埋め尽くす音と映像。そこに実物の役者がかぶさっていき、映像のなかに溶け込んでいく──。さらに天野による言葉遊びがあったり、同じシーンが何度も繰り返されたり、夕沈振付による独特のユックリダンスがあったりと、まるで宝箱のようにいろんなものが詰め込まれている。初めて観る人は、その圧倒的な世界に惹きけられるに違いない。けれども何度か観ている身としては、「今回はストーリーがいまいちだなあ」とか「いまいち迫力が足りないかなあ」というように、多少の当たり外れがあることも確か(基本的にストーリーはあってないような感じだし、迫力がどうのということに関しては過去の傑作と比較してという意味で)。また、天野は台本が遅いことでも有名で、台本が初日に間に合わずにそのまま幕を開け、日に日に台本が増えていって、初日と楽日では上演時間が全然変わっていた──なんていう話もよく聞く。以前聞いた話だと、天野さんは稽古場に行かずに台本を書いているため、台本で「演出」もしているのだとか。つまり、台本に役者の配置やら台詞のきっかけやらの演出を、びっしり書き込んでいる。役者たちが台本を見るだけですぐ動けるようにしてあるという。
今回は7月に愛知で幕を開け、京都公演を経ての東京公演。なので、台本の問題はすでにクリアされていると考えていいだろう。一体どんな天野マジックが観られるのか。期待しています。



コンドルズ 日本横断大連勝ツアー2011 第壱弾『グランドスラム

8/25〜28◎東京グローブ座 他地方公演あり
構成・映像・振付・出演◇近藤良平 出演◇青田潤一 石渕聡 オクダサトシ 勝山康晴 鎌倉道彦 ぎたろー(新人) 古賀剛 小林顕作 スズキ拓朗(NewFace) 田中たつろう 橋爪利博 平原慎太郎(FA) 藤田善宏 山本光二郎
http://www.condors.jp/

男性のみ学ラン姿でダンス・映像・コントなどを展開するダンスカンパニー。日本のみならず20ヶ国以上で公演している。
NHK総合サラリーマンNEO」内「テレビサラリーマン体操」、NHK教育からだであそぼ」の振付・出演もしている。
そのコンドルズの「日本横断大連勝ツアー」が、東京から開幕する。その後、札幌、静岡、大阪、広島、福岡、富山、埼玉と全国を回る。東京公演は前売完売ですが、当日券は出るようです。
とにかく大勢の男たちが踊るパワフルなダンスは、一度観たらやみつきになる。間に挟まれるコントも面白い。というか、もはや「ダンス」というジャンルではくくれないほど、いろんなものが詰め込まれている。コントだったり人形劇だったり。だからダンスを普段あまり観ていない人にもおすすめです。
コンドルズのダンスはかっこいい。もともとダンサーだった人とそうじゃない人が混在しているので、全体の技術が高いかといえば決してそうではないんだけど、その凸凹感も含め面白い。メンバーはみんな個性的で、彼らの姿を見ているだけで楽しく、ワクワクする。個人的にはやはり近藤さんのダンスが好き。年々近藤さんのソロパートが少なくなってきているんだけど、もっと多くしてほしいな。あとは藤田さんのダンスもしなやかでかっこいい。藤田さんはちょっと中性的な感じが魅力。あと石渕さんの濃さとか、勝山さんや小林さんのテンションの高さとか、鎌倉さんの物静かでいてキレのあるダンスとか、オクダさんや橋爪さんの味のある風貌とか、とにかく見どころ満載。メンバーひとりひとりが面白く、大勢のなかでも埋没していない。今回は新人さんも出るようで、どんな感じなのかも楽しみです。



キラリ☆ふじみ レパートリー新作 劇場ツアー型パフォーマンス
『モガっ!〜記憶はだいたい憶測。』
8/26・27◎富士見市市民文化会館キラリ☆ふじみ
作◇田上豊(田上パル) 構成・演出・振付◇白神ももこ(モモンガ・コンプレックス)
出演◇北川 結 眞嶋木綿 夕田智恵(以上、モモンガ・コンプレックス) 角 梓 鈴木 燦武谷公雄 田中美希恵 東山佳永 名取秀樹 二宮未来(田上パル) 召田実子 安村典久 長尾晃司 清野美土 中藤有花 やぶくみこ
http://d.hatena.ne.jp/momonga_complex/20110709/1310190028

キラリ☆ふじみ館内をすべて舞台&客席にしておくる、五感でめぐる脳内旅行記。田上パルの田上豊さんが作を担当し、モモンガ・コンプレックスの白神ももこさんが構成・演出・振付を担当。6つの入り口と6つのものがたりがあるという(チラシより)。モモンガ・コンプレックスのブログによると「キラリ☆ふじみのぜ〜んぶを使った、かつてない壮大なパフォーマンス企画です。ホール内の舞台面や客席はもちろん、廊下も、階段も、エントランスも、展示室も、屋上も、外の水場も、、、あんなところでもこんなところでも、何かが観られるかもしれませんね。昼・夕方・夜、どの回にご来場になるかによっても、明かり・温度・音の感じ方が全然ちがったものになるはずです。」とのこと。
おそらく館内を移動しながらそこで行われるパフォーマンスを見る、という感じになるのかな。なんかすごく面白そうで行きたいんだけど、この日程だと行けそうもない・・・。おそらく、行った人の感想を羨ましがりながら聞く・・・という感じになりそう。



身毒丸
8/26〜9/6◎天王洲銀河劇場
作◇寺山修司/岸田理生 演出◇蜷川幸雄 出演◇大竹しのぶ 矢野聖人(新人) 蘭 妖子 石井愃一 六平直政 /マメ山田 飯田邦博 福田 潔 澤 魁士 塚本幸男 プリティ太田 鈴木彰紀※ 平山遼※ 羽子田洋子 難波真奈美 池島 優 佐野あい 多岐川装子 石澤美和 茂手木桜子※ 岡部恭子※ 中島来星 若林時英 尾関陸(身毒丸アンダースタディ)(※=さいたまネクスト・シアター)
http://www.horipro.co.jp/usr/ticket/kouen.cgi?Detail=165

何度も再演を重ねている蜷川演出の『身毒丸』。白石加代子藤原竜也のステージが印象的だったが、今回はキャストを一新して継母役に大竹しのぶ身毒丸役に新人の矢野聖人。大竹しのぶの継母はすごく気になりますが、チケット代が高いし、銀河劇場だし、なにより白石加代子藤原竜也の舞台がトラウマになるほど凄まじかったので、それを心に焼き付けておきたいということもあり、今回は見送ろうと思います。



ロロ『夏も』
8/31〜9/4◎SNAC、10/5・6◎アトリエ劇研
脚本・演出◇三浦直之 出演◇板橋駿谷 亀島一徳 篠崎大悟 望月綾乃 呉城久美(悪い芝居) 小橋れな 島田桃子
http://llo88oll.com/next.html

ロロの夏シリーズ第4弾となる本作は、久々の単独公演。ロロといえば、男女の出会いの物語を様々な技巧を凝らした演出で一気に魅せるイメージがあるけれど、今回はより台詞を重視した内容になるらしい。ロロの夏シリーズは『15mm』と『20年安泰。』で見ていて、個人的にはあまりピンとこなかったのだけど、今回はどうなるか。



地点上演実験Vol.4『トラディシオン/トライゾン』
8/31〜9/4◎シアタートラム
テクスト◇ジャン・ジュネ 翻訳・構成◇宇野邦一 出演◇安部聡子 山田せつ子 監修◇三浦基
http://chiten.org/next/

私が過去に観た地点の公演は、『三人姉妹/桜の園』『──ところでアルトーさん、』のみ。実験的かつ斬新な演劇という印象で、正直すべてを理解できたわけではなかったけれど、強いインパクトがあって、「また観てみたい」と思わせた。この安部聡子と山田せつ子のコラボレーションは、何度か上演を重ねているようだが、私は観ていない。コンセプトは「演劇とダンスの共生」のようだ。だが三浦基のチラシ文によると「この度、私はギブアップしたい。演劇とダンスとは、言葉と身振りと言い換えてもよろしいが、これをひとつの舞台にまとめるということは、まずもって難題なのでした。それは儚い夢でした。」と。三浦は2人に「やめよう」と言ったそうだが、2人は「やめない」と言った。それで三浦は演出ではなく「監修」という形で携わることになったという。・・・と、いろんな意味で実験的要素の強い本作。公演は、パフォーマンス(約60分)とトーク(約60分)の二部構成で行われ、トークゲストには鵜飼哲香山リカ、杉山至、楯岡求美やなぎみわなどが名を連ねている。香山リカの回に行けたら行きたい。



鈴木製作所1『ノミコムオンナ』
8/31〜9/5◎シアターモリエール
作◇蓬莱竜太 演出◇鈴木裕美 出演◇陽月華 木村晶子 / 福麻むつ美 鴇田芳紀 安田栄徳 瀧川英次 柴一平 / 久保酎吉
http://blog.livedoor.jp/yumis1230/

鈴木裕美さんによる新しいプロジェクト公演第一弾。脚本は東京グローブ座の芝居で鈴木さんと組んだ蓬莱竜太さん。チラシにある鈴木裕美さんの文は以下。
「演劇には、劇作家を置かず、俳優たちがエチュードと呼ばれる即興劇を繰り返すことで、少しずつ自分の役の台詞を組み立てていく芝居の作り方があります。以前から、ダンスにおける振り付けは、ストレートプレイにおける台詞だと思っていました。だとしたら、振付家を置かず、即興を繰り返し、俳優たちが自分の役の振り付けを作るやり方でも、芝居ができるんじゃないか?今回はそのやり方で、やってみようと思っています。「映画の脚本みたいなつもりで」とお願いし、物語と、そぎ落とした台詞は、蓬莱竜太君が書いてくれました。冒険好きで芝居好きな俳優たちも集ってくれました。稽古場で俳優たちと、盛大にグズって作りたいと思います。あ、それから、鈴木製作所というのは、“鈴木が誰に頼まれた訳でもないが、なんかやりたいことをやる公演”のプロジェクトの名前です。以後お見知りおき頂けたらありがたいです。」
うーん、面白そう。コンセプトは「演劇みたいなダンス」ということですが・・・わりとそういう、演劇とダンスの境目をなくそう、というような公演ってたくさんあるような気がしますが、ベテランの鈴木裕美さんがそれをどうやるのか。