毛皮族の軽演劇2011『私たちには出来ないこと』

毛皮族の軽演劇2011『滑稽を好みて人を笑わすことを業とす』
V演目:ライブ『私たちには出来ないこと』
8/9◎リトルモア地下

3演目セット券を購入した人のなかから50名を招待して催された演目。当然ながら、来ている人はみんな毛皮族のファンばかりで、盛り上がった。
歌あり踊りありトークありお店あり。時間もなかっただろうに、奮闘する劇団員たちが頼もしい。
時間がなかったゆえか、開場が25分ほど押した。だが劇場に入るともう催しは始っている。そこかしこに各劇団員がおり、「お店」をやっている。
マリーちゃんは「まーちゃんの似顔絵店」をやっていて、10円でお客さんの似顔絵を書いていた。
柿丸さんと武田さんはビールと氷結と水を売っていた。
羽鳥さんは過去の公演のDVDを売っていた。
高野さんと延増さんは、今回の公演で使った小道具を売っていた。
高田さんは占い店をやっていた。
金子さんはDJの役で、間違えながらも頑張ってPCやCDラジカセを駆使して音を出していた。
吉牟田さんは金子さんやほかの人の助手的なことをやっていた。
みんな、お客さんに向かって直接声をかけたりしながら、「開場遅れちゃってごめんね!暑かったでしょ!」などと言いながら、その場を盛り上げる。
とにかくみんなが一丸となってお客さんをもてなしてくれる。そのサービス精神に感動した。
ジュンリーこと江本さんの登場で、いよいよ開演。
ジュンリーがかっこよく歌う。とたんにその場をかっさらっていく。
そこはジュンリーのステージだった。
観客は皆、かっこいいジュンリーに釘付けだった。
ジュンリーは歌詞を覚えておらず、吉牟田さんが持つ歌詞カードを見ながら歌っている。けれど、それでもキマっているのだ。
いつも思うのだけど、ジュンリーのこのかっこよさはなんなんだろう。
舞台に立った瞬間、江本さんはジュンリーになり、独特のオーラを身につける。
物怖じせず、堂々と、ジュンリーは歌い、お客さんに話しかけ、はては舞台上から劇団員やスタッフにダメ出しをしたりもする。
ジュンリーのサービス精神満載のトークは面白い。
ジュンリーだけでなく、ほかの劇団員たちももちろん歌い、踊る。
前回の『小さな恋のエロジー』でやったKARAの歌も歌ってくれた。
休憩をはさみ、第二部は、アフターライブ。
ジュンリーが、今度はお客さんと一緒になって歌う。
私は知らない歌ばかりだったけれど、なんとか手拍子しながら歌った。
盛り上がったときにいつもジュンリーがやる、ペットボトルの水を口に含んで客席に吹き出す、というパフォーマンスも、やってくれた。
私はジュンリーの目の前にいたので、完全に水が頭からかかった。超嬉しかった。
毛皮族は、芝居もとても面白いけれど、ライブも楽しい。ライブならではの楽しさがある。
最後は、恒例の『すりガラスの20代』と『ワンダフルワールドロケンロール』で締める。
もっともっとジュンリーを観ていたくて、名残惜しい気がしながら、帰った。

ジュンリーから、リトルモア地下が今日をもって閉鎖になるというアナウンスがあった。
私はその前から知っていたけれど、その場で知って驚いている人も多かった。
軽演劇シリーズは、次回で最後になるが、まだ場所は決まっていないという。
リトルモア地下という場所だからこそできた軽演劇シリーズだから、その場所がなくなってしまうのはとても残念だ。
毛皮族以外にも、個人的に好きな劇団が、たくさんこの小屋で公演を行った。
ゴキブリコンビナート、東京デスロック、鉄割、ハイバイ、ブス会、あと飴屋さんの日替わりの『3人いる!』などなど・・・。
小劇場界に貢献してきたこの小屋がなくなってしまうのは、本当に残念だ。
最後なんだということを噛みしめながら、今日の公演に参加していた(観たというより参加したという感じだった)。

過去の日記などで振り返ると、私は2006年にやった『コーヒー&シガレッツ的な軽演劇』から始まり、ほぼ全演目を観ている。
最初のころは、グダグダの公演もあった。けれど、ここ最近、本当にレベルが上がってきたと感じる。それは江本さんの脚本もそうだし、劇団員の演技力や存在感も上がってきた。
毛皮族の劇団員一人ひとりの魅力が、軽演劇シリーズをやることにより、強化され、それが本公演にも還元されている。
今、毛皮族は、とてもいい座組みになっている。一人ひとりが面白く、個性的で、演技力も瞬発力もある。キャラがかぶっている人がいないのもいい。
次回をもって終了となる軽演劇シリーズ。軽演劇に限らず、とにかくずっとこの愛すべき劇団を見守りたい。ジュンリーにずっとついていきたい。
私は毛皮族のファン中のファンなんだ、という思いと決意を新たにした夜だった。