キャラメルボックス・アナザーフェイス『ナツヤスミ語辞典』

キャラメルボックス・アナザーフェイス『ナツヤスミ語辞典』

脚本◇成井豊キャラメルボックス) 演出◇中屋敷法仁(柿喰う客) 出演◇多田直人 渡邊安理 井上麻美子 鍛治本大樹 林貴子 原田樹里(以上キャラメルボックス) 七味まゆ味 コロ 深谷由梨香 村上誠基 永島敬三 大村わたる 右手愛美(以上柿喰う客) 熊川ふみ(範宙遊泳) 川田希 森下亮(クロムモリブデン
8/3〜11◎新国立劇場 小劇場

<あらすじ>公式サイトより
クサナギ(多田直人)の元に一通の手紙が届いた。それは三年前に担任した生徒から。そこに書いてあったのは、ちょっと不思議な夏休みの出来事だった。
カブト(熊川ふみ)・ヤンマ(深谷由梨香)・アゲハ(原田樹里)の3人は中学2年生。ヤンマがプールの水を抜いてしまったことがバレて、アオタ先生(村上誠基)からプール掃除を命じられる。そこへ、白い服を着た男・ウラシマ(鍛治本大樹)が現れて、カブトが母・アカネ(コロ)から借りてきたカメラでみんなの写真を撮りはじめる。翌日現像してみると、そこに写っていたのは、なんと15年前の景色だった……。


以下、ネタばれあり。



キャラメルボックスが他劇団とタッグを組んでひとつの作品を創るという企画「アナザーフェイス」。今回は14年ぶりの実現だという。
タッグを組んだのは、ぶっ飛んだストーリー展開と、役者の身体性を駆使したスピーディーかつギャグテイストな演出で近年話題沸騰の若手劇団・柿喰う客。
柿喰う客の中屋敷さんによる演出が斬新で面白かった。抽象舞台を自由に使い、役者の魅力を目一杯見せている。
役者もどの人もよかった。楽しんでやっているのが伝わってきたし、どの人もその役に合っていた。
残念だったのは肝心なストーリー。成井さんが27歳のときの作品ということだから、結構古い作品だ。
ベタな話で、感情移入できる人もいなくて、途中で飽きてしまった。。。
こういうベタな話を、感動的な舞台にするのがキャラメルの得意技なのだ。だとしたら、この舞台、もしかしたら成井さんの演出のほうが感動できたのかもしれない・・・とか思ってしまった。
中屋敷さんって、「感動させる」タイプの演出家ではない。なのに、「感動させる」物語を演出しているから、なんかちぐはぐな感じがしてしまった。
どうせならもっと中屋敷さんが好き勝手にやってもよかったのに・・・とか思った。
たとえば、中屋敷さんだったら、女子中学生たちのエピソードをもっと膨らませたりするんじゃないだろうか。
なんかこの話、一体誰が主人公なんだかはっきりしないし(たぶんカブトが主人公なんだろうと思うが)、中学生の話なんだか大人の話なんだかはっきりしない。
クサナギという、俳優志望の元教師は、必要な存在なのか?ストーリーテラー的な役割なんだけど。必要な存在なら、クサナギのその後(先生に戻った後)とかも描いてもよかったんじゃないかと思う。なんか中途半端。
女子中学生たちのエピソードも、途中でいろいろ生徒の葛藤が明かされるけど、中途半端な感じがした。もっとこう、壮絶なイジメがあったりとか、友情があったりとか、してもいいんじゃないか。青春物語、というにはなにかが足りない。恋もないし。
結局カブトの父と母の物語に集約されていくのが、なんか小さくまとまってしまった感があった。
中屋敷さんの脚本だったら、もっと大風呂敷広げるだろうに。
役者では熊川ふみ、深谷由梨香がやはりその役柄もあって印象に残った。七味まゆ味はもったいない使い方。もっといろいろできる人なのに。多田直人も、最初は主役かと思ったのにそうでもないし・・・うーん。