ブルドッキングヘッドロック『毒と微笑み』

ブルドッキングヘッドロック『毒と微笑み』

作・演出◇喜安浩平ナイロン100℃) 出演◇西山宏幸 篠原トオル 永井幸子 寺井義貴 馬場泰範 藤原よしこ 深澤千有紀 岡山誠 津留崎夏子 林生弥 喜安浩平 甘粕阿紗子(カムヰヤッセン) 石原美幸 遠藤留奈(THE SHAMPOO HAT) 佐瀬恭代 関寛之 戸泉真衣 栩原楽人 凪沢渋次(ナギプロ) 松下幸史(動物電気/乱雑天国) 加瀬澤拓未 竹井亮介(親族代表) 長田奈麻(ナイロン100℃
8/4〜10◎中野ザ・ポケット

以下、ネタばれあり。


これまで私が観てきたブルドックは、ナンセンスはナンセンスだけど、日常的な身近な設定が多かったように思う。学校の話だったり、漫画家の話だったり、いろいろなパターンはあったけれど、設定自体は身近なものにして、そこからナンセンスな方向に物語が捩れていく・・・というパターンだったように思う。
だが今回は違った。
挑戦してきたな、と思った。
舞台は、間もなく戦争が始まろうとしているある国。
軍人やその家族たちの物語だ。
といっても政治的な話ではなく、軍人の妻たちのホームパーティー(実は先生をも招いた保護者会)の様子や、軍人の娘の通う高校の演劇部の話や、娘の同級生が心酔している役者たちの話などが交互に出てくる。
娘の同級生に恋してしまう父親(軍人)・・・という、ちょっと『アメリカン・ビューティー』みたいなエピソードも出てくる。
なんだか、今までの日常的な話から、一気に社会的な話に広げたなあ、と思った。それはやはり今の時代の状況が影響しているのだろうと思う。
政治に対する批判的な見解も、台詞の合間に見え隠れするが、それをはっきり表明するわけではなく、喜安はあくまで「笑い」で闘おうとする。
それは彼の「笑い」に対するスタンスの意思表明である。
カーテンコールがなかったことも、ひとつの表明なのかもしれない。
この舞台、ナンセンスが苦手な人は、もしかしたらダメかもしれない。でも私は、二時間半の間、退屈せずにゆっくり楽しく観ていられた。次にどんな展開になるのか予測できないのが面白かったし、役者もみんなうまい。幸せな時間だった。