毛皮族の軽演劇2011『語りのゴミ』

毛皮族の軽演劇2011『滑稽を好みて人を笑わすことを業とす』
S演目『語りのゴミ』

作・演出・出演◇江本純子 出演◇羽鳥名美子 延増静美 吉牟田眞奈(THE SHAMPOO HAT) 高野ゆらこ
7/23〜8/9◎リトルモア地下

やっぱり面白い!江本さんのキャラクターが最高。時事問題の取り入れ方が江本さんらしくて、この人はきっとどんなことでもそこに「おかしさ」を見出してしまうんだろうな・・・と思った。

以下、ネタばれ。


段ボールがうず高く積まれた部屋で作業をする3人の女。段ボールをひとつひとつ開けて、的確な場所に置く作業なのだが、段ボールの中見が全部マスクだったり、全部冷えピタシートだったり、と意味不明。
時折、その家の老婆(江本さん)がやってきてあれこれ指示したり、女たちをねぎらおうとお茶を持ってきたりする。しかし老婆は呆けていて、持ってきたお茶も10年前のものだったり・・・。
この江本さん演じる老婆が笑える。
震災の話も出てくるのだが、その扱い方は深刻なものではなく、どこかに「おかしさ」を滲ませている。
劇中、地震が起こり、老婆が慌てふためいて「防災リュック」を持ちだすのだが、そのリュックの中見は、老婆が昔得意だったというボーリングの玉や、盆踊りで着ていた浴衣など、防災とは関係ないようなものばかり。たまりかねた清掃作業の女たちは、リュックの中見を点検し、「必要なもの」と「必要じゃないもの」に分けていく。
ほかの段ボールの中見も、老婆の娘が昔好きだったというチェッカーズのレコードや、昔の映画のパンフレットなどの思い出の品だったりする。老婆はそれらの娘の思い出の品を、リュックに入れてほしい、と言う・・・。
この部屋にあるものは、老婆以外の人間にとってはゴミのようなものかもしれない。10年前のお茶やコラーゲン、羊羹なんかは完全にゴミだし、老婆にとっての思い出の品も、たとえば震災が起きたときに真っ先に持ち出すべきものではもちろんない。
自分にとってなにが必要で、なにが必要じゃないのか、ということを認識し、溢れるモノを選別して捨てて行く。そういう作業は必要だ。
だけど、この老婆のように、ただただ溢れ続けるモノのなかに埋もれ、なにがどこにあったかも思い出せず、漫然と日々を過ごしていく・・・という人のほうが、実は多いのではないか・・・と思った。そして、それは別に悪いことでも、責められることでもなく、実に人間的な、滑稽なことなのだ。