音楽劇『リタルダンド』

音楽劇『リタルダンド

作◇中島淳彦 演出◇G2 音楽◇荻野清子 出演◇吉田鋼太郎 一路真輝 高橋由美子 伊礼彼方 松下洸平 市川しんぺー 山崎一
7/15〜31◎PARCO劇場、8/5◎青少年文化センター アートピアホール、8/6・7◎イオン化粧品 シアターBRAVA!

音楽雑誌『リタルダンド』の名編集長としてバリバリ働き、そこそこ遊んでもいて、素敵な妻がいる潤治(吉田鋼太郎)が、若年性アルツハイマーになってしまった。日々物忘れがひどくなり、仕事ができなくなり、しまいには仕事仲間のこともわからなくなってしまう。
潤治には三年前に死別した前妻との間に息子の恵治(松下洸平)がいる。半年前に洋子(一路真輝)と再婚し、これから幸せに暮らしていこうとしていた矢先の出来事だった。
リタルダンド』の特別編集号の準備が進んでいるというのに、潤治は病気のせいで打ち合わせを忘れたり、取材をすっぽかしたりする。
編集部員たちは潤治の病気を知って困惑しながらも、なんとか特別編集号を出そうと奮闘するが・・・。
夫に献身的に寄り添う妻の洋子に感動。
潤治はだんだん記憶がなくなってきて、洋子のことを「恵」と前の妻の名前で呼んだりする。
洋子は傷つくが、それを表に出さず、夫の言動に合わせる。
潤治の病気の進行は早く、記憶がどんどんなくなり、言動もおかしくなり、会社も退職する。
編集部員たちはなんとか『リタルダンド』の特別編集号を出そうとするが、潤治の担当の原稿が受け取れず、編集長不在で、危機に追いやられる。
潤治は病気のせいで周りの様子など一向に気にせず、洋子の世話になって日々暮らしている。
洋子は日に日に消耗していく。
ある日、洋子を見かねた洋子の兄の小松(山崎一)が、潤治に洋子と別れてもらおうと、離婚届を持ってやって来る。洋子のことを「恵」と呼んでいる潤治の姿を見て、小松は洋子に言う。
「この人はお前が誰かもわかってないじゃないか!」
だが意外にも潤治は小松に激しく抵抗する。このときの台詞が泣ける。
「この人がいなくなったら私は困るんです・・・私はこの人が好きなんです。別れたくないんです。お願いです」
潤治が毎日つけているメモのなかに、「洋子」という文字がいくつか見つかる。潤治は洋子のことを完全に忘れたわけではなかった・・・。
洋子は改めて潤治と二人で生きていくことを決意する・・・。
・・・と、ストーリーはこんな感じなんですが、共感できるかといえばそうはならず・・・。
もし自分が洋子の立場だったら、はたしてそこまでできるだろうか。
いくら愛する相手でも、前の奥さんの名前で呼ばれて、それでも相手の世話をし続けることができるだろうか。
アルツハイマーは、かかった本人も大変だけど、周りも大変だ。
そういえば今日のニュースで、91歳の母親が、71歳の認知症の娘と心中した・・・というのがあった。
母が認知症、というのならまだわかるけど、71歳になる娘が認知症で、自分も91歳なのに、娘の看病をして、この母はすっかり疲れ切ってしまったのだろう。
哀れすぎる・・・。
リタルダンド』のこの夫婦が今後どうなるのかはわからない。
夫はだんだん記憶をなくしていき、最後には本当に妻のことがわからなくなって、病院に入ったりすることになるのかもしれない。
それでもこの妻は、夫を愛することをやめないのだろう。
綺麗なところで話を終わらせたのはよかった。