ヨーロッパ企画『ロベルトの操縦』

ヨーロッパ企画『ロベルトの操縦』

作・演出◇上田誠 出演◇石田剛太 酒井善史 角田貴志 諏訪雅 土佐和成 中川晴樹 永野宗典 西村直子 本多力 山脇唯 /山本真由美 中山祐一朗阿佐ヶ谷スパイダース
9/8〜18◎本多劇場


以下、ネタばれあり。



舞台は砂漠。中央には「ロベルト」という戦車が鎮座している。
砂漠で、いつ鳴るとも知れないラッパ(任務指令)を待ちながら過ごす人々。もう2週間もラッパは鳴っていない。皆ダラけきっており、キャッチボールをしたりして暇を潰している。そんなところに、「2キロ先に自販機があるかもしれない」という情報が入って来た。砂漠で飲み物も自由に飲めない彼らは、自販機でコーラを買いたいという思いにとりつかれる。しかし砂漠のなか2キロ先まであるかどうかわからない自販機まで行くのはかなり大変。どうするか・・・となったとき、「あ、ロベルトで行っちゃう?」となるのが、この劇団らしさ。
任務に忠実な永野宗典演じる「少年兵」はみんなを止めるのだが、みんなはそれも聞かずにロベルトに乗り込む。巻き込まれて永野もロベルトに乗って砂漠を走ることに。
しかし、見つかったのは砂に埋もれた自販機だった・・・。そこで諦めて戻るかと思いきや、いったん火がついてしまった彼らは、自販機を求めてさらに砂漠を進むことになる。さらに、途中でバイク隊に遭遇し、彼らが海に向かっていることを知ると、皆は自販機ではなく海へと行き先をシフトする。とにかく彼らは任務から解き放たれたかったのかもしれない。いつラッパが鳴って呼びだされるか知れないというのに、彼らはそれを知らせる無線すら持っていない・・・。この無謀さがヨーロッパ企画らしいところだ。
彼らを追って司令官がやってくると、彼らはあっさり「軍を辞める」と言う。司令官は彼らを説得しようとするが、彼らの考えが変わらないと知ると、司令官もロベルトに乗り込み、「俺も軍を辞める!」と・・・。このあたりになるともうファンタジーだ。この勢いで、最後は宇宙まで行ってしまう。
なんか、ありえない話なのに、最後まで惹きつけて観せる力がある。リアリティなんてかけらもないし、かといってSFというわけでもない。ただ特殊な環境にあるダラけた人々が、ちょっとSFな方向に行ってしまったというトンデモファンタジーだ。そこにはなんのテーマも教訓もなければ、オチさえもない。それでもこれだけ面白いんだから、なんでもアリなんじゃないの?と思う。こういう劇団があったっていい。