文学座公演『連結の子』

文学座公演『連結の子』

作◇田村孝裕 演出◇上村聡史 出演◇金内喜久夫 中村彰男 高橋克明 浅野雅博 木津誠之 亀田佳明 倉野章子 金沢映子 山崎美貴 片渕忍 上田桃子 吉野実紗
9/9〜23◎吉祥寺シアター

ONEOR8の田村さんが担当する脚本に期待して観に行った。若い作家と演出家に、ベテランの俳優たちはどう応えるのか。文学座アトリエではなく吉祥寺シアターでの公演というところにも新鮮味を感じた。
内容は三世代にわたる家族劇。ド直球の家族劇はあまり好みじゃないということもあり、いまひとつ乗り切れず。良い芝居だったとは思うのだが。家族の繋がり(共通の趣味)が「電車」というのもマニアックという感じがした。最後、みんなで列を作って歌うシーンはよかったけれど。
アフタートークによると、『連結の子』というタイトルはストーリーより先に考えられたものだそう。だから、電車が家族の共通の趣味というのは後付けなのだそうだ。それを聞いて少し腑に落ちた。
役者はよかった。特に、家族に迷惑をかけている篤役の浅野雅博さんがよかった。篤の妻の沙紀は、実は黒い性格なのに周りにはいい顔を見せているなど、悪女ぶりがよかった。この二人がもっと家族をかき回すような存在になったりすれば、もっとストーリーもドラマティックになったのでは。なんか、ストーリーがいまひとつ盛り上がりに欠ける気がした。地味というか。
ONEOR8は、傑作とされる『ゼブラ』も個人的にはあまり好きではない(これもド直球の家族劇)。観れば観たで面白いのだけれど、あまり私の好みにぴったり合うというわけではないのかもしれない。
なぜ自分がド直球の家族劇が好きではないのか、考えてみた。
そもそも私は「普通の家族」というものを重要視していないのかもしれない。
たとえば、自分が結婚して子供を作って幸せな家庭を作ろう、みたいなことはあまり思わない。
同じ家族を描くでも、普通じゃない家族を描いた芝居が好きだ。たとえば岩井さんの『て』とか松井さんの『家族の肖像』『自慢の息子』とか。
田村さんの描く家族劇は、ウェルメイドというか、感動させよう、泣かせようとしているところがどこかにあって、そこが嫌なのかもしれない。
『連結の子』においては、やはりラストの皆が列を作って電車の歌を歌うシーンがカタルシスになっているが、感動、まではいかない。中途半端だ。この路線でやるならやるで、もっとベタベタに感動させたり泣かせたりしてほしい気もした。