8月後半の気になる舞台・1

8月後半の舞台で個人的に気になっているものを、初日の早い順に挙げます。
書く時間があまりなく、文章も長くなってしまったので、何度かにわけてアップします。


マームとジプシー8月公演『塩ふる世界。』
8/17〜22◎STスポット
作・演出◇藤田貴大 出演◇青柳いづみ 伊野香織 荻原綾 尾野島慎太朗 高山玲子 緑川史絵 吉田聡
http://ameblo.jp/mum-gypsy/

8月の大本命はこれです。といっても、前売はすでに完売しており、当日券のみですが・・・。
私がマームとジプシーを初めて観たのは、去年の5月にSTスポットで上演された『しゃぼんのころ』。そのときからその世界観、作品の持っている質感、のようなものに圧倒され、以後観続けている劇団です。
スタイルとしては、おそらくチェルフィッチュに影響を受けていて、その延長線上にある感じです。同じシーンを角度を変えて何度も繰り返す「映像的手法」も特徴のひとつ。
ですが、そういうスタイルよりも、もっとどしんと観る者に訴えかけてくる圧倒的な世界観を、マームとジプシーは持っていると思う。思春期の頃や地元にいた頃を思い出させるような。その人を形作った核になる部分に、どしんと響いてくる感じがします。だから、題材はごく日常的だけど、いやだからこそ、観る人によって受け取るものが全然違う気がする。ですので、当日券のみですが、ぜひ芝居好きの多くの人に観ていただきたい作品です。
20日19時30分の回と21日15時の回は、主宰の藤田さんの地元である北海道で先月上演された『待ってた食卓、』が特別上演されます。地元での公演で、きっと多くのものを吸収したであろう本作が、横浜で特別上演される・・・これは相当面白いはずです。



吾妻橋ダンスクロッシング
8/19〜21◎アサヒ・アートスクエア
出演◇遠藤一郎 悪魔のしるし core of bells 地点 ボクデス 三浦康嗣(□□□) 康本雅子 Line京急 大谷能生×吉田アミ+ucnv 毛利悠子 Sachiko M(回によって変更あり)
http://azumabashi-dx.net/

毎年夏に行われる吾妻橋ダンスクロッシング。ダンス、演劇、アート、お笑い、音楽・・・「グルーヴィーな身体」をキーワードにあらゆるジャンルの最先端パフォーマンスをクロスさせるサプライズなパーティー(チラシより)。
私が初めて吾妻橋ダンスクロッシングへ行ったのは3年前なので、今年で4度目になります。最初に行ったときは、今よりもっとライブハウスっぽい雰囲気で、席も椅子席は一部だけで、ほかは座布団席だったり立ち見だったりで、DJタイムに観客が踊ったりできるスペースもあった。けど、2年前からは、ダンスフロアがなくなり、椅子・ベンチ席がほとんどを占め、「舞台を観る」ための客席作りになっている(今年どうなっているかはわからないが)。場内は飲食もできるし(一昨年は快快による素敵なフード店があった)、途中30分近い休憩もあって、インスタレーションを見て回ったりすることができる。ライブハウスっぽい雰囲気もあるし、ダンス系のイベントだからおしゃれな人も多く、普段なかなかこういう場所に行かない私としては、かなり心が浮き立つ。1ドリンク付きなので、ビールを飲みながらのんびり鑑賞できるのもいい。・・・と、わりとこのイベントに関しては雰囲気重視で、肝心のパフォーマンスは、当たり外れがあるように個人的には思います。鉄板はもちろん康本雅子なので、できれば彼女の出る回を観ることを個人的にはおすすめしますが、ほかのパフォーマーも面白そうな方が揃っている。個人的に楽しみにしているのは以下。地点(実験的な演劇をやる地点が、ここでどんなパフォーマンスをするんだろう)、Line京急(山縣太一と大谷能生のパフォーマンス。ダンスと台詞と音楽の絡まり合いがとてもスリリング)、三浦康嗣(□□□)(ままごと『わが星』でおなじみ。ライブで見るのは初めてなので楽しみ)。



現代能楽集Ⅳ『奇ッ怪 其ノ弐〜「能」「狂言」から想を得た、ちょっと奇妙で可笑しなお話〜』
8/19〜9/1◎世田谷パブリックシアター
作・演出◇前川知大 出演◇仲村トオル 池田成志 小松和重 山内圭哉 内田慈 浜田信也 岩本幸子 金子岳憲
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2011/08/post_242.html

公式サイトによる作品概要は以下。
「2010年の紀伊国屋・読売の両演劇賞を受賞し、今最も期待される演劇人として波に乗る前川知大が、11年も世田谷パブリックシアターのために新作を書きおろします。
09年シアタートラムで上演された『奇ッ怪〜小泉八雲から聞いた話』では、小泉八雲の「怪談」から短編を5編選び、「語り物」の手法を取り入れて、1人が物語を語り出すと、たちまちに登場人物がその物語と現実とを自由に行き来しながら、不思議な話を軽妙に表現し「ちょっと恐い」が「笑わずにはいられない」作品を創り出しました。
2011年に手がける今回の新作は、この『奇ッ怪』の手法を使った新作です。
モチーフを小泉八雲から「狂言」と「能」に変え、狂言にあるように市井の人々の滑稽さを楽しみながら、能楽の特徴である、空間と時間を自在に超えて、「情念」と「呪い」の先にある魂の存在を描きます。
古典と現代の時空を自在に行き来し、夏祭りの夜の怪談とでもいうような現実と夢幻が交錯する世界を、前川ならではの不可思議な感覚で描き出します。」
私は09年の『奇ッ怪〜小泉八雲から聞いた話』を観ましたが、とても面白かったです。イキウメでの前川さんの、ある意味尖がった部分が緩和され、よりわかりやすくエンターテインメントになったというか。怖い話で、ゾクッとする部分もありますが、笑える部分もかなりあるので、じめじめした感じはありません。まあ出演者を見れば、単なる怖い話ではないということがよくわかるはず。今回は「能」「狂言」をモチーフにしているということで、能や狂言が苦手な私には若干の不安もありますが、私の好きな内田慈さんも出演されることですし、夏の一夜の怪談という感覚で観に行こうと思います。